日本でハンカチ王子やハニカミ王子など騒がれていた随分前から香港では既に〇〇王子と呼ばれていた男がいた、我らがティ・ロン主演『少林拳王子』(劇中ではそんな名称で呼ばれてませんが…)

次期皇太子になる2人兄弟の赤ん坊ツータイとタオシンを狙うのは宿敵「鉄の二本指を持つ九王爺」率いる暗殺集団。
追っ手から逃げる為に護衛たちは10人ほどの影武者赤ちゃんを胸に抱いての大活劇。いやいや、剣が赤ちゃんに当たったらどうすんだい、全然護衛になってないわ、と映画が始まって2分ほどで失笑してしまった。

生き別れとなったツータイとタオシン兄弟。少林寺で三バカ和尚に育てられ成人したタオシンこそがティ・ロン兄貴。
やがて兄弟は再会するも仲違いしたりイチャイチャしたり、こういう役はティ兄貴の十八番だね。

今回はジャッキー・チェンの『拳』シリーズが流行ってた時代なのでティ兄貴はコミカルなカンフーアクションに挑戦、前年に公開されたサモ・ハン監督の元祖ホラーコメディ『鬼打鬼』にも影響を受けてホラーパートもありますよ。流行り物は何でもマネする香港映画品質は健在で、劇中音楽は79年の『マッドマックス』第一作を何の悪怯れもなく丸パクリ、予告編にまで堂々と使ってるわ。

「火と水の刺客」や大事な一本毛が抜けた波平さんのような軍団「十八羅漢陣」など対戦相手も超個性的。水面から剣先をサメの背ビレのように出して迫ってくる「水将」の喋りは何故オネェ口調なんだ。タオシンの師匠三バカ和尚は「バネなし木製ホッピング」に乗って戦い、ラスボスは「カラクリ神輿」に乗って戦うって、当時の香港映画人の発想は奇想天外で素晴らしいです。

九王爺の反乱により離ればなれになった王子たち。少林寺のやたらと強い３バカ和尚に育てられた長男を演じるのは、軽やかで明るいティ・ロン。
衣装やセット、さらには音楽までもが全くかっこよくないのはなんでか知らんけど、彼の爽やかさは際立っててかっこよかったですね。
輿を使ったアクションが大変ユニークでした。

ちょーーおもしろい！漫画かよ。チャンチェ作品とかに比べてしまうとまるで下手くそにみえてしまうけど、やりすぎの倍速にスローにワイヤーでガチャガチャうるさい演出がとにかくものすごい勢いでずっと楽しい。いい大人がこんなのみてていいんだろうか…っていま言うかだけど不安になるくらいバカバカしい。ヤンチャしすぎて懲戒受けてるアホ少林三人組が、敷地から一歩も出てはいけない戒律を、木につかまったりぶら下がったり竹馬使ったり小学生並みの勝手な解釈で地に足つけずに争いに首つっこんでるのサイコー。がっつりコメディやってるティロン兄貴と生真面目なイートンシンの組み合わせもいいし、皇帝に仕立て上げられちゃった奴も実はいい奴。夫の霊に憑かれた娘さんやら、絵みたいな武器持った火と水テーマの刺客やらバカバカしすぎる死闘、鋼鉄のツーフィンガーのボスが乗ってるヤツなんていうのあれ神輿みたいなアレ使ったクライマックスも全部やりすぎのサービス魂ギチギチに詰まっててなんだかほんとみてて幸せ。金の棒の一撃で頭が胴体に埋まっちゃって。あーバカ。はじまりも終わり方も完璧。タンチア監督、ほかの作品もみます！