一人旅

チャーリーの一人旅のレビュー・感想・評価

チャーリー(1992年製作の映画)
5.0
リチャード・アッテンボロー監督作。

チャールズ・チャップリンの生涯を描いた伝記ドラマ。
幼少期の困窮生活、カノー劇団への参加、渡米、ハリウッドデビュー、ユナイテッド・アーティスツの設立、赤狩りによる国外追放から晩年までを描き切っている。本作を観るだけでチャップリンの個人史はおろか、ハリウッドが歩んだ歴史や国際情勢がアメリカ映画界に及ぼした負の影響まで知ることができる。映画俳優・監督としてのチャップリンだけでなく、数多くの女性遍歴や家族との関係まで描かれている点が興味深く、人間:チャップリンの波乱に満ちた人生ドラマが展開されるのだ。
『モダン・タイムス』や『独裁者』等で資本主義やファシズムを批判しながらも、それらの作品の根底に流れるのは“人を笑わせたい”というチャップリンの純粋な想いだ。贅沢にも実際の映画の映像が度々挿入され、その新鮮さは今観ても全く色褪せることはない。コミカルな動きただそれだけで面白く、セリフは不要。トーキーの時代が押し寄せる中、チャップリンがあくまでサイレントに拘り続けた理由も劇中明示される。「浮浪者が喋り出したらお終いだ」の言葉が印象に残る。
そして、チャップリンの映画とチャップリンの人生が一つに溶け合いながら迎える結末は見事としか言いようがなく、アッテンボロー監督の演出センスをまざまざと見せつけられた気分だ。
キャストも素晴らしく豪華だ。チャップリンに扮したロバート・ダウニー・Jrが見せるコミカルな動きは本物のチャップリンを見ているかのような完成度。フォークを刺したパンを靴に見立てて踊る姿はカラー版の『黄金狂時代』を見ているようだった。
また、チャップリンの実の娘であるジェラルディン・チャップリンがチャップリンの母ハンナ・チャップリンに扮している他、ダン・エイクロイド、ケヴィン・クライン、ジェームズ・ウッズ、アンソニー・ホプキンス、ダイアン・レイン、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ペネロープ・アン・ミラー、マリサ・トメイらが出演している。
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