ボブおじさん

チャーリーのボブおじさんのレビュー・感想・評価

チャーリー(1992年製作の映画)
3.8
「大脱走」や「ジュラシック・パーク」などの出演俳優として活躍する一方、「遠すぎた橋」「マジック」「ガンジー」「コーラスライン」「遠い夜明け」などの監督としての多大なる功績を残してきたリチャード・アッテンボローでさえ、彼の名を前にすればその業績もかすれてしまう。 

チャールズ・チャップリンは、間違いなく映画史上最大の偉人といえよう。

この映画の監督を務めたアッテンボローは言う〝彼は役者で、ダンサーで、監督で、作曲家で、編集者で、脚本家だった。後にも先にもそんな人間は他にいない〟。

さらにこうも言っている〝80年前彼がリトルトランプの扮装をして衣装部屋を出た時「映画が生まれた」〟その時スクリーンに映っていたのは映画の神様だった。

誰が監督を務めようと波乱に満ちた「チャーリー」の生涯を1本の映画に納めることは不可能だ。また誰が役者を務めようと天才役者チャップリンの再現をすることも不可能だ。

この映画は、映画界最大の功労者に対するリスペクトに溢れた、豪華キャストによる感動の大作である。だが同時にいかにチャップリンが飛び抜けた天才であったかを思い知らされる結果にもなっている。

劇中に引用されるチャップリン映画のハイライトシーンや舞台裏の描写は、結果的にオリジナルがいかに優れていたかを再認識させる結果になっている。

「アイアンマン」シリーズで知られる主演のロバート・ダウニー・Jrは、3年間に渡るオーディションの末、ダスティン・ホフマンら強敵を抑えてこの大役に選ばれ、チャップリンの動作や表情をパントマイムやメイクによって忠実に再現した。その努力に裏打ちされた演技は見事という他はない。

だが、新進気鋭の実力派俳優でさえ、この天才の笑いの才能だけは真似することができなかった。残酷な話だが当然本物には敵わない。

それでも個人的にこの映画は、是非多くの人に見てもらいたい作品なのだ。何故ならこの映画を見れば、誰もが本物のチャップリンの映画を観たくなるからだ。それこそがこの映画の最大の功績ではないかと思う。




〈あらすじ〉
喜劇王チャップリンの波瀾万丈の人生を、豪華スタッフ&キャストで描いた感動大作。1963年、スイス。72歳のチャップリンは自伝の出版を準備していた。幼くして芝居小屋の舞台に立った彼は、名門カルノー一座に入り、アメリカ巡業で映画と出会う。ハリウッドに飛び込んだ彼は、喜劇映画で世界的なスターになるが…。


公開時に劇場で鑑賞した映画をDVDにて再視聴。