【不幸な家庭はそれぞれに不幸である・・・】
タイトル通りで断片からできているのかと思うと、そうではありません。完全な断片なら筋書きをたどることも不可能なはず。
要するに何組かの主役がいて、それぞれの生活や活動がいったんばらばらにされて、集められているのです。ここで、大学生がばらばらな図形を組み合わせる作業をする場面が出てくるのが示唆的。主役はうまく組み合わせることができず、友人に教えられてその代わり金をせびられます。有機的なつながりを他人より早く見いだした者が勝ち、という現代的な価値観を暗示しているとも受け取れます。
いくつかの日付が選ばれていますが、それぞれ最初はテレビニュースから始まります。それらはどれも、国際紛争とかストライキなどのもめ事を扱った報道番組。世界は紛争に満ちているのであり、それが主役たちに、直接的ではないにせよ間接的な影響を与えているのだと、制作側は言いたげです。
といっても、同じヨーロッパながら他国からオーストリーに不法に入国してきた浮浪児も主役のひとり。都会ではそういう浮浪児もなんとか生きていける。この世界のありようを示しているようです。
そのほか、一人暮らしの老人が、同じ都市内で暮らしている娘や孫娘と長電話するシーンや、養女をもらい受けながらぎこちなさが消えない若夫婦など、「ふつうに幸せ」な主役はあまり出てきません。ハネケ監督らしいと言えばいいのでしょうか。