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少林虎鶴拳のJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

少林虎鶴拳(1978年製作の映画)
4.0
ロー・リエ演じる白眉道人のチートっぷりと、その尋常ならざる佇まいによる驚愕のコンテンツ的推進力を根底に、世代交代を経た仇討ちという重層的な大河ストーリーをドラマチックに展開させながら、人の信念としての鶴形拳と虎形拳が単なる形象性を超越し、愛の下で反発し融和していくという有り様を見せられてしまったので僕はもうそれでいいんですけど、もしも息子の修行描写をもっと丁寧に作り込んでいたら正真正銘の大傑作だったと思うのです。

しかしながらその粗雑さというか、何かが明らかに欠如している感じがまた味わい深いというような、この時代の香港台湾カンフー映画に対する歪んだ愛情が確実に私の中に存在しておりまして、今作で言えば「大傑作ではない事もそれはそれで逆にイイ」というような至極面倒臭い感慨を抱いているのもまた事実であるという、ノミと同類の低脳ド腐れ田吾作野郎でございますよろしくお願い致します。

対白眉道人戦においては、先達諸兄が満を持して金的を狙いながらもことごとく返り討ちに合っていくという定型をシリアスに繰り返すワケなんですが、そうした「金的攻撃=死亡フラグ」という常軌を逸した関係性を躊躇なく構築していくその姿勢が、明らかに映像的な強度となって立ち現れているこの素晴らしい勢いに、私はドゥルーズ=ガタリの〈速くあれ、たとえ場を動かぬときでも!〉という言葉を思い起こさずにはいられないのであります。

つまりこの勢いこそは〈運動は外延的であり、速度は内包(強度)的なのである〉、そして〈速度とは絶対的性格である〉という言説の体現なのであって、明らかに後の『ドラゴン太極拳』の原型となっている今作の、白眉道人の気功による〈ぴょ~~ん〉という奇天烈な効果音までもが絶対的な性格を内包していて、〈ぴょ~~ん〉がそうした強度としての精神性を獲得しているという信じ難い現実に、とにかく頭の中で〈ぴょ~~ん〉が速度を持って鳴り響いている状態であります。
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