ロジャー・コーマン監督が自身の手掛けたポー原作怪奇映画シリーズ全8作の中で最も気に入っているという最終作。原作はポーの「ライジーア」。
ヴァードン(ヴィンセント・プライス)の最愛の妻ライジーアは「人は天使にも死神にも屈することはない」との言葉を残して病死。残された彼は廃墟となった修道院で世を避けて暮らしていた。それがある日、庭先で出会った快活なロウィナに亡き妻の面影を見て、やがて二人は結婚することに。新たな生活が始まるが、ロウィナはヴァードンが夜毎に姿を消すことに気づく。。。
イギリスの立派な修道院やストーンヘンジ遺跡など外ロケを多用し、室内の美術衣装も耽美で、ゴシックホラーの雰囲気はたっぷり。
なのだが、終盤の描写が超自然現象なのか主人公の妄想なのかが判然としない作りで、非常に解りにくい結末だった。
前作「赤死病の仮面」 (1964)も終盤にいきなりアート&哲学的映画に転換して面食らったが、ビジュアルが突き抜けていたのでそれなりに納得できた。しかし本作の場合は解りにくさが勝ってしまった。黒猫とライジーアも何らかの関係がありそうに匂わせているが今一つ解らなかった。
おそらく、コーマン監督の幻想表現の文法が自分に合わないのだと思う。監督自身は満足していて本作の幻想演出を称賛する海外レビュアーも多いのだ。
ポー原作怪奇映画シリーズ全8作の中で、個人的には「恐怖の振り子」(1961)がベストだった。
※同年のイギリス製ホラーとしてはハマー・プロ×テレンス・フィッシャー監督の「妖女ゴーゴン」(1964)が有名。本作と比較することで両者の個性が際立つようで興味深い。