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ジョニーの事情/JOHNNY 2の一人旅のレビュー・感想・評価

ジョニーの事情/JOHNNY 2(1991年製作の映画)
5.0
ロベルト・ベニーニ監督作。

パレルモを舞台に、マフィアの愛人が仕組んだ陰謀に巻き込まれていくスクールバスの運転手ダンテの姿を描いたコメディ。

『ライフ・イズ・ビューティフル』のロベルト・ベニーニの記念すべき監督デビュー作で、主演はやはりベニーニ本人。本作ではスクールバスの運転手とシチリアマフィアの大物という一人二役の好演を魅せる。主人公が恋に落ちる相手役は『ライフ・イズ・ビューティフル』でもベニーニ演じる主人公グイドの妻ドーラを演じたニコレッタ・ブラスキ。ちなみに、私生活でも二人はパートナーである。ロベルト・ベニーニはどちらかと言うと野暮ったい三枚目だが、奥さんのニコレッタ・ブラスキは完璧な美しさの横顔が印象的なイタリア美人。

スクールバスの運転手ダンテ(ロベルト・ベニーニ)が、ふとしたきっかけで出会った美女マリア(ニコレッタ・ブラスキ)にパレルモの別荘に招かれるが、実はそれは罠で、マリアの狙いはダンテを彼そっくりのマフィアの大物ジョニー(ロベルト・ベニーニ)の身代わりにさせることだった…という“マフィアの愛人に一目惚れした運転手の巻き込まれ型コメディ”で、ロベルト・ベニーニとニコレッタ・ブラスキのアンバランスな男女関係の顛末と、知らず知らずの内にマフィアの陰謀に利用されていく平凡な運転手の滑稽さが魅力的な逸品。

ポイントは、マフィアの身代わりにされているのにその事実に全く気づかないこと。オペラ劇場の桟敷席で観客に「人殺し!」と非難されても何のことやらさっぱり分からず逆切れする始末だし、果物屋の前で暗殺されそうになっても、なぜそうなったかが分からず警察署へ駆け込んで一騒動巻き起こすドタバタな展開に思わずニヤリ。パーティの席で大臣に麻薬を譲り受けたものの、それが糖尿病の薬だと勘違いして聖職者相手に大粗相をしでかす場面にも笑いが止まらない。まさにベニーニの真骨頂と言えるオーバーなコメディ演技が全編にわたって目白押し。

最初から最後まで“能天気&無知”を貫き通す主人公が痛快なコメディ映画。だが、終盤一気に膨れ上がるロマンチックな急展開は、それまでそんな気配を微塵も出してこなかっただけに嬉しい驚き。少しの切なさは残るが、それ以上に人生の至福に包まれるエンディングに後味がいい。イタリア映画らしい音楽も印象的である。秀作。
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