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夢の中の人生のpikaのレビュー・感想・評価

夢の中の人生(1980年製作の映画)
5.0
画面がカッコ良すぎて開始数分で腰砕け。
自社と共同だが資本も舞台も言語も俳優陣も、カメラマンのニクヴィスト以外のスタッフもドイツから。脚本はベルイマン。だからなのか下地はベルイマンらしさで溢れているのにドイツの雰囲気が混じり合って表現主義っぽいというのか、暗くて陰鬱でとにかくめちゃくちゃカッコいい。
冒頭とラストのみカラーで後はモノクロな演出も最高で、カラーの鮮烈さと黒が映えるモノクロのコントラストとどちらも酔えるほど魅力的なショットの連続。
ドラマも面白いのに映像がカッコよくて気が散るほど!笑

男が娼婦を殺害する事件が起こり、犯人が何故殺人事件を起こしたのかを事件から遡ること数週間前といった具合に戻って描き出し、そこから事件後の聴取に飛んだりと、家族や友人との会話や苛まれる悪夢と衝動に苦悩する日々を見せ、さらに周りの人々の事件前と事件後の犯人に対する印象を対比させながら展開する。

殺人を犯す人間の心理を軸に、他者や社会的な抑圧が自己の歪みを生んで精神を侵していく様がジワジワと表層に浮かび上がるというドラマの面白さ。
無意識下の自己の抑制が夢に象徴となって現れ、破壊衝動に駆られるほど膨れ上がる苦悩が凄まじく刺激的。本人は意識していないが故の虚無感と彼の抑圧や欲望を示唆する他者の言動が生む意識的なズレが面白い。

登場人物は面と向かっていても会話をしているというよりは一方的に自己を語っているようで、相手に伝えたいのではなく言葉にすることで自己を確認するかのような心理劇が面白い。
埋もれるには勿体なさすぎる傑作!!!
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