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愛と呼ばれるもののotomisanのレビュー・感想・評価

愛と呼ばれるもの(1993年製作の映画)
4.0
 自分かわいさも愛の内ならリヴァーの男も相当愛に溢れている。音楽コンテストの応募に遅刻して、滑った同士のミランダを出汁にしてでも自己愛を捩じ込もうという。そこから来年に向けて反りの合わない二人でやり直しのドラマかと思ったら、この募集、毎週やっているそうな。週一で吐き出さないと愛に潰されてしまうのだろうか?

 こんな男が売れてゆく一方、鳴かず飛ばずなミランダや彼女に気のある無茶なカイル、女優志望のリンダらが付いたり離れたり、自分の事で精一杯でも誰かを求めずにいられない。
 登竜門を今度はミランダのマジックでくぐってしまったリヴァーだが、自己愛が契約と仕事に堰かれてもう溜まらない。この溢れた奴をウン百円のガチャガチャで指輪にコンバートするんだと、それを元手にプレスリーのメンフィスでミランダ相手に1年1日のお試し婚を迫るんだと。

 どう見ても自己愛の危機を再度のミランダ・マジックで解決しようという感じだが案の定雲行き怪しく、カイルもリンダもそれぞればらばらになってゆく。こんな壊れかけ愛が音楽の肥やしになるんなら音楽家は誰も幸せにはなれないのじゃないか?

 なんともはや、誰かへの愛を歌って自己愛を満たすような事に始まって、愛が疑われ関係が壊れることでようやくミランダの自己愛も叶う恰好らしい。そいつがばねになってリヴァーと縒りが戻るというのでもなくカイルとつるみ直すのでもなく、またメンフィスで今度はリヴァーとの離婚式、ついでに三人まとめてお試し音楽婚トリオにでも走るんだろうか、それもいつか壊れると見越していても今始めなければ、来週にはケチな運命が口を開けてくるかもしれない。
 悪運より速く走る術も三人なら昨日のダメな二人と一人よりましかもしれない。愛でそこそこ満たされた今しかダッシュできまい。
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