邹启文

恍惚の人の邹启文のレビュー・感想・評価

恍惚の人(1973年製作の映画)
4.3
凄い、60歳で80代の痴呆老人を演じきった森繁久彌もさることながら、全ての介護を一手に受けざるを得なくなった高峰秀子の目の演技が半端ない。
ラストのあの顔は明らかに一線先に行ってしまった人こそが見せられるめだよ。

日本でいち早く認知症を取り扱った作品なだけあり、リアリティが半端ない。
しかし「百花」や「アリスのままで」のようにずっと暗い雰囲気にはせず、とにかく明るく所々笑い声が上がるようなコメディ演出で進めていったのはとんでもない試みだと思う。
しかし記憶から筋力、やがて言葉と日々何かが消えてゆく描写の積み重ねが大変上手く、序盤からすっかり虜にされましたよ。

正直序盤であっさり物語に潜り込めるようになったのも、その後何かが失われる度に悲しい気分にさせられたのも全て主演の森繁久彌こそが成せる技としか言い様がない。
結局全ての被害を嫁さん1人に任せようとするご家庭問題も含めて、見た後に何かを考えさせられる傑作になりましたよね
邹启文

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