紫のみなと

素直な悪女の紫のみなとのレビュー・感想・評価

素直な悪女(1956年製作の映画)
4.1
ブリジットバルドーはアクの強い顔面が好みではなく結局のところ作品に恵まれてないイメージもあり、出演作を観たことがなかった。
本作の監督はロジェバティム!そういえばバティムだった、そうかバティムか…とひとり感慨深いのは、バティムといえば私の中で、17歳のカトリーヌドヌーブの心を奪ってドヌーブを自分好みに創作した男。そしてドヌーブは19歳で私生児を産む。
「私に生きる勇気を与えたのは、バティムへの憎悪でした」というドヌーブの告白を読んだのは自分自身も10代の頃で、このセリフで私はドヌーブが堪らなく好きになりました。
そんなバティムが本作を撮ったのはドヌーブと出会う前で、バルドーもバティムによって創られた作品。

出だしは裸でしたが一着目のブルーのシャツワンピース(ボタンが膝下のスカートの裾まであってそれを膝上の絶妙なラインから外している)から、二着目の口紅と同じ赤のワンピースをまとった姿の、映画が始まっておおよそ15分位しかたってない時点でもう、バルドーがただのお尻と胸の女優ではないことにハッキリと気付かされました。
ブロンドで小顔で、程よく筋肉のついた美しい下肢を持ったグラマラスな女ならヨーロッパには履いて捨てるほどいるでしょう。バルドーのもつ魅力はそういう事ではないんですね。この映画を観て、バルドーのように生まれたかったと思わなかった女性は一体どれ程いるでしょうか?子宮がずっと微熱に震えているような、美しさが発散しきれず悶えているような魅力。

ストーリーは他愛のない痴話喧嘩の類いであるともいえますが、しかし夫役がなんと名優ジャン=ルイ・トランティニャンとは!
当時バティムの妻だったバルドーがこの映画の出演男優と駆け落ち騒ぎを起こした話は聞いたことがありましたがそれがトランティニャンだったとは!トランティニャン、やるじゃないか!
スクリーンの中で熱っぽくバルドーを追い続ける眼差しは本物だったのでした。

もうずっとバルドーしか目に入らず映画は進んでいきましたが、結局バルドーのお尻と胸があれほど美しいのは姿勢が良いからですね。
鳥籠とスーツケースとうさぎを抱えて草原を突き進む歩容が言葉にならないほど決まっているのもそのせいかと。バルドーにはなれなくても姿勢だけは真似しようと思った次第です。