碧

若者のすべての碧のレビュー・感想・評価

若者のすべて(1960年製作の映画)
4.5
1960年公開の貧しい労働者階級を描いた白黒映画だけど、どんなに血と汗と涙と泥にまみれて汚れていても、20代のアラン・ドロンが美しくて、彼が出てくると画面がきりりと引き締まって光輝く。

アラン・ドロンが演じるロッコは良すぎて悪いくらい善人。本当のアラン・ドロンはもう少しやんちゃなんじゃないかと思うけど、おとなしめに演じてる印象なのはヴィスコンティのひとつの美の理想像なのか。

ロッコが兄のためにいやいややっているボクシングの祝勝会で、抑えきれない内心の願いを口にした場面が心に残る。

「遠い先だろうけどいつか…
帰郷したい
俺が帰れなければ
兄弟の誰かが故郷に帰ってほしい
ルーカかな

(ルーカ:帰るなら一緒にだ)

覚えておけよ
俺たちの故郷はオリーブの国だ
月の美しい国
そして虹の国だ

覚えているか?
家を建て始めるとき、
大工の親方が
最初に通った人の影に
石を投げる

(ルーカ:なぜ?)

いけにえの代わりだ
家の基礎を固めるために」

母と4人の兄弟は、黙ってその場にいない、自堕落な生活で破滅しかかっているもう一人の兄弟を思い浮かべる。

ヴィスコンティはこの作品までは自らの出身階級を否定するかのように社会派的作風だったけど、この後は貴族階級や階級にこだわらない作品を撮り始める。

この作品で社会派的作風とヴィスコンティらしい叙情性が融合し、ひとつの頂点を極めたからなのか。
碧