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若者のすべて(1960年製作の映画)
4.3
 ミラノ駅に降り立つ列車を格子越しに捉えたロング・ショット、1955年のある晩、パロンディ家の当主である母親ロザリア(カティナ・パクシヌー)は、次男シモーネ(レナート・サルヴァトーリ)、三男ロッコ(アラン・ドロン)、四男チーロ(マックス・カルティエ)、末っ子のルーカ(ロッコ・ヴィドラッツィ)を連れてこの地へやって来る。南部のバジリカータ州ルカニアから、遠い北部の都市ミラノへ。一家は長男ヴィンチェンツォ(スピロス・フォーカス)を頼りにこの地へやって来ていた。だが長男の迎えはなく、終点ランブラーテへ向かうバスからの景色を不安げに見つめる兄弟たちの姿。一方その頃ヴィンチェンツォは恋人ジネッタ(クラウディア・カルディナーレ)との婚約祝いのパーティの真っ最中だった。寄る辺なきまま、息子たちとそこへ転がり込んだロザリアたちは、ジネッタの母親と大喧嘩を繰り広げ、部屋を追い出される。ヴィンチェンツォも追い出されたことによる久しぶりの兄弟5人揃っての生活、5人兄弟はそれぞれの生き方を模索しながら、ミラノでの新生活をスタートさせる。ボクサーとしての素質を買われたシモーネは、退廃的な娼婦ナディア(アニー・ジラルド)と恋に落ちる。それから数ヶ月後、ロッコに徴兵の声が掛かる。

 田舎町からミラノへやって来たパロンディ家は、大黒柱となる父性の不在を抱えている。肝っ玉母さんであるロザリアは5人の男の子を生みながら、男系家族の長として振る舞うが、平和な日々は長くは続かない。長男の拳闘の夢にたまたまついていった次男と三男も同じくボクシングの門を叩くが、2人の拳闘への姿勢は実に対照的だ。シモーネはその腕を見込まれ、すぐに娼婦の彼女が出来るが、暴力が苦手なロッコはボクシングとは一定の距離を置きながら、女だらけのクリーニング屋で、店主のルイーザ(シュジー・ドレール)に鍛えられている。だが露悪的で堕落したシモーネにより、ロッコは働き口を追われる。やがて兵役の時が来たロッコと、ケガにより兵役を免れながら、人を殴る職業を選択したシモーネとの強烈な対比。それから1年2ヵ月後、堕落したカップルの片割れナディアはロッコの正義感に駆られた寂しげな瞳に恋をする。英国ホテルに泊まるという淡い夢、クリーニング屋の店主ルイーザから奪い取ったシルバーのブローチ、シモーネがこしらえた40万リラの借金とサングラスを外すナディアの左目を伝う涙。いつかオリーブの国に戻るというロッコの勇ましい宣言により、パロンディ家は一旦は再生したかに見えるものの、堕落したシモーネの蛮行が全てを黒く塗り潰す。イタリア国内の都市部と田舎との経済格差、崩壊した偽りの家族制度を鋭くえぐった今作は、『太陽がいっぱい』と並ぶアラン・ドロン絶頂期の傑作であり、ヴェネツィア国際映画祭で見事、審査員特別賞を受賞した。
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