和桜

若者のすべての和桜のレビュー・感想・評価

若者のすべて(1960年製作の映画)
3.8
イタリア南部からミラノの大都会へ移り住んだ兄弟と母親の顛末を描くルキーノ・ヴィスコンティ監督作。ネオレアリズモ作品として南北イタリアの経済格差や当時の暮らしをドキュメンタリータッチで映してある。
原題が『ロッコとその兄弟達』とあるように、軸となっているのはアラン・ドロン演じる三男のロッコ。ここに次男のシモーネが全てを掻き回し破滅的な展開に走って行く。

現実をありのままに撮ろうとする映画なので仕方ないけど、シモーネの言動にはやっぱり辟易してしまう。なにより悲しいのがあまり出てこない長男の存在で、彼を頼って家族が移住してきたはずなのに長男は自分の妻と子供の事で手一杯。これもまた仕方ないし当たり前のことなんだけど、何か出来たのではと思いながらどんどんと掛け違っていく様が辛い。
こんな話を兄弟毎のチャプターで進めていきながら、180分で見事に纏め上げてしまう作品の完成度はさすが。ヴィスコンティ監督作で一番好きなのは『白夜』だけど、毎回これでもかと感情を揺さぶられる。四男、五男と一応は未来へ託してあるようにも思えるのが救いにも感じられて良かった。
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