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若者のすべてのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

若者のすべて(1960年製作の映画)
3.9
「揺れる大地」でイタリア南部における貧困を素人を起用しドキュメンタリータッチで撮ったルキノ・ヴィスコンティ監督が、本作では職を求めて南部から北部へ移住した家族の崩壊を、当時の若手スターを起用して描いている。
後の「山猫」同じく、カメラはジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽はニーノ・ロータ。
ヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞受賞。
モノクロ、ビスタサイズ。
初公開版は168分。今回の鑑賞は、検閲でカットされた2ヵ所を加えた4K完全修復版で177分。
原題:(伊) Rocco e i suoi fratelli、(仏) Rocco et ses frères、(「ロッコと彼の兄弟たち」の意味)  (1960)

イタリア南部の田舎で貧しい生活をしていた母と4人の兄弟は、貧困から抜け出そうと、先に家を出ていた長男を頼り、北部の都会ミラノへやってくる。
ところが、定職はすぐには見つからず、ボクサーとして頭角を現したかに見えた二男はやがて道を踏み外し、娼婦ナディアを巡って三男と対立する…。

~その家族 パロンディ家~
・夫を亡くした母ロザリア(カティナ・パクシヌー)
・長男ヴ ィンチェンツォ (スピロス・フォーカス):かつてボクサーを目指していた。
・二男シモーネ(レナート・サルヴァトーリ)
・三男ロッコ( アラン・ドロン):兵役を経て、二男の犠牲になり嫌いなボクサーとなる。
・四男チーロ(マックス・カルティエ):苦学して学校を出て、アルファロメオの技師になる。
・五男(末っ子)ルーカ(ロッコ・ヴィドラッツィ)

~その他の登場人物~
・娼婦ナディア( アニー・ジラルド)
・長男の婚約者ジネッタ(クラウディア・カルディナーレ)
・四男の恋人フランカ (アレッサンドラ・パナーロ)
・三男が勤めたクリーニング店の女主人、ルイーザ(シュジー・ドレール)
・二男をチェッリのジムに引き抜くモリーニ (ロジェ・アナン)
・ボクシングジムのマネージャー、チェッリ( パオロ・ストッパ)
・二男のチンピラ仲間イーヴォ(コラード・パーニ)
・チンピラ、ニーノ・ロッシ( ニーノ・カステルヌオーヴォ)

「僕が都会になじめないのは生まれ育った所じゃないからだ。すぐ慣れる人もいるし、都会人なみに暮らせる人もいるが、僕は違う」

「人生なんて考え方ひとつだ。心配することはない。心配しても始まらないよ。
…怖がらずに信じる。信じるのさ。
いったい何を?
分からないが、何でも。
あなたを?」

「ロッコ……ロッコ 助けて!ロッコ 助けて!ロッコ……ロッコ 助けて!
ロッコ……ロッコ 何か言って!ロッコ 言ってよ」

「敵は奴じゃなかった。誰か知らない憎い相手だった。いつの間にか心の中に渦巻いていた憎悪を相手にぶつけていた」

「故郷にいたままだったら…。しかたない。これが運命さ。俺やお前の運命なんだ」

「人間じゃない。ケダモノよ。あなたが触れると何でも汚れる。下劣になる。
私の大事なものを汚した。 人間のクズよ」

「帰郷したい。俺が帰れなければ、兄弟の誰かが故郷に帰ったほしい。
覚えておけ。俺たちの故郷にはオリーブの国だ…」

「お前が大きくなったらきっと分かる。…故郷での生活はただ服従して奉仕するだけ。…まるで家畜みたいなものだった。…奉仕するだけの生活はよくないが、義務も忘れてはならないと…」

「ロッコは聖人さ。でも自分を守れない。実生活では無力なんだ。すべてを許してしまうが、許してはならないこともある。

「でも故郷に何がある。故郷にもみんな変わってしまうよ」

レナート・サルヴァトーリの嫉妬、 
アラン・ドロンの無力な優しさ、
アニー・ジラルドの哀れ。
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