塩湖

ザカリーに捧ぐの塩湖のレビュー・感想・評価

ザカリーに捧ぐ(2008年製作の映画)
4.0
事件と裁判の顛末が語られるのと同時に、このムービーの存在価値みたいなものが変容していく。二つの"物語"が一つになり、それは誰かに捧ぐ手紙の様式を採用することで記憶される。要素の何もかもが奇跡のように噛みあってめちゃくちゃ強い"贈る言葉"をかたちづくってて、そんなつもりは全くなかったのに胸を打たれてしまった。また演出が独特だった。ハイスピードで映像と音を畳み掛けられてコミカルだとすら思えた矢先、急に挿入される静止画と静寂から放たれるおぞましさは尋常ではない。そして誰に捧ぐ映画なのか、という点に執着しているであろう作り手としてのカートのなんとかして冷静さを保とうとしているまなざしの奥からは、アンドリューの友人としての怒り、悲しみ、やるせなさの在りようがしかし確かに感じられる。その上で、途中、最悪の出来ごとを映像で綴るときに赤色のノイズとさけびの演出でその気持ちを爆発させてしまうさまは、何よりも怖くて、痛切で、忘れ難い。どんなに考えたところで整理なんて到底つけられないが、このドキュメンタリーにおける粗暴さとまっすぐさは唯一無二だと率直に思う。
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