男の子映画道場

ザカリーに捧ぐの男の子映画道場のレビュー・感想・評価

ザカリーに捧ぐ(2008年製作の映画)
2.9
撮影する意義がリアルタイムのうちに二転三転して、表現が適切かどうかは別としてジェットコースターサスペンスみたいな展開に図らずもなってしまったような作品。ザカリーに向けて撮るつもりの素材だったからか編集はコミカルだし、アンドリューの顔がジャック・ニコルソン或いはジャック・ブラックにそっくりでまるで劇映画を観ているような錯覚にもなるけれど、起こってしまった悲劇は現実で、あまりに苦しいし理不尽。
ただ、映画の行き着いた先に、現実と向き合って関係者それぞれが一歩を踏み出すという意味が生まれて、新たに生まれた映画の意味を噛み締めて終わるのは、稀有な運命を辿ったこの作品ならではだと思う。ただその一方で目を背けている現実もここにはある。徹底的に加害者側の視点を排しているのは、これが元々プライベートなフィルムであることが大きな理由ではあると思うけれど、それを暴いてしまうことの恐怖感みたいなものも感じる。もちろん、加害者に同情はできないし、加害者を優位に立たせてしまった司法の判断はかなり解せないけれども。もどかしさの塊みたいな映画。(1563)
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