菩薩

ザカリーに捧ぐの菩薩のレビュー・感想・評価

ザカリーに捧ぐ(2008年製作の映画)
5.0
本来ドキュメンタリー映画が持つべき「中立性」と言う部分に於いてはまるで不合格であると言わざるを得ず、また製作者及び語り部達の感情の迸りが怒涛の速度で駆け抜けていく為、情報の伝達と言う部分に於いても不親切であると言わざるを得ない。ただそれらの点がこの作品への評価を貶める要素には当たらないと思うし、この作品が当初の目的を逸脱してあの様に変容していく様こそが、ドキュメンタリー映画が一つの生命を宿している事の証明になるかと思う。

少なくとも一本の映画の中に込められた愛情/憎悪なる感情に関してはこれ以上の物を俺は知らないし、映画が出来ること/為すべきことに最大限挑戦し、そして発揮出来ている作品の一つでもあると思う(結果論だが)。この作品がどうにかして「完成」に至った事自体が一つの奇跡であると思うし、それがこうして自分の元に届いた事にもまた運命の様な物を感じる(ので満点を付けるの意)。

この世界には人を傷つけ悲しめる為に生まれた悪魔もいれば、人を癒す為に生まれた天使や勇敢で偉大な勇者もおり、そう言った人々が自らが被った悲しみから目を逸らさず人生を諦めもせずに声を上げて下さる事で、人類は少しずつだが次のステップへと歩を進める事が出来るのだと言う事実を改めて痛感する。

この作品を鑑賞するに当たって必要なのは当然映像ソフトと再生機器なのであるが、それ以上にそれ相応の「覚悟」を持って画面に立ち向かっていかないと、脆弱なメンタルの者は確実に明日以降の生活に支障を来すと思うので気を付けた方がいい。俺の脳内からはあの悪魔の「笑顔」がきっとしばらく消えないだろうと思う。とりあえずどんなホラー映画より恐ろしい瞬間を目の当たりにしてしまった俺の精神は、無事に崩壊した事を報告させて頂く。
菩薩

菩薩