たにたに

影なき狙撃者のたにたにのレビュー・感想・評価

影なき狙撃者(1962年製作の映画)
4.2
【洗脳】2023年43本目

非常に痛烈な政治批判。
第二次世界大戦後の、東西冷戦時の朝鮮戦争、そしてマッカーシーの赤狩りによる反共産主義活動が題材となる今作は、思想的な抑圧による啓蒙と恐怖をスリリングに描いている。

なんといっても、本作の恐怖ポイントは"洗脳"である。
事実、朝鮮戦争時に共産側に捕えられたアメリカ兵が洗脳されていたという記録もある。
捕らわれた軍人たちの幻覚と真実を交互に見せるシーンは映画ならではの見事な見せ方で、洗脳されたショー(ローレンス・ハーヴェイ)がまだ若い仲間を撃ち殺すシーンには身の毛もよだつインパクトがある。

ショーの母親は極右である副大統領候補の夫人であり、対するリベラル派の大統領候補のジョーダンに対抗すべく協力するよう打診されるが、ショーは拒否。
反骨精神を垣間見せる若者の描き方には、「理由なき反抗」のジェームズディーンの匂いも感じさせる。

しかし、
"カード占い"という悪魔の囁きによって洗脳スイッチが入り、我を忘れるショーの黒幕にはとんでもない事実が待っている。

様々な陰謀に巻き込まれたり、自身の精神とは異なる行動に扇動されてしまう人間の心理は、現代社会でも起こる同調心理による様々な二分化の様相も呈している。

悲しい結末と、圧巻の演技力になかなか立ち上がれない。そんな作品でした。
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