くわまんG

デス・ハントのくわまんGのレビュー・感想・評価

デス・ハント(1981年製作の映画)
4.5
あらすじ:あいつには、帰るところがなくなったんだ。俺にはわかる。

テレ東帝王ブロンソンの大雑把な殺戮に癒してもらいたくて、ゲオに転がってたのでレンタルしてみたら、ウエスタン風『ランボー』×『ヒート』な漢の通行手形ムービーでした。監督は『女王陛下の007』を撮ったお方、なるほどエモいわけです。

1931年、極寒のカナダ山奥。戦後帰郷したら拒絶された元軍人ジョンソン(ブロンソン)は、正当防衛しただけで賞金首にされてしまうが、立場上追うことになった巡査部長ミレン(リー・マーヴィン)はなぜかジョンソンに擁護的で…というお話。

逃げるジョンソンは、無愛想だけど命懸けで動物を助ける男。追うミレンは、飲んだくれだけど誰よりも仲間思いなおやっさん。二人とも帰るHouseはあるけど、安らぐHomeを無くした男です。

大衆はジョンソンを、君子面こいて輪を乱した余所者=危険分子=排除対象だとし、“噂の殺人鬼”に仕立てあげて攻撃します。相手を支配するための攻撃、まさに戦争の行動原理です。

しかし、ミレンだけは彼を敵視しません。ジョンソンが己と同様に、世の不条理に直面して心が冷えているだけで、根が善良であることを見抜いているからです。殺害ではなく逮捕を、戦争ではなく勝負を所望します。ジョンソンにも、自分のようにHomeを見つけてほしかったのでしょう。

そんな男を囲う仲間も、やはり人情味溢れています。都会育ちの童貞ルーキー、名前だけ大層な古株、インディオの○せ子、夫に捨てられた擦れっ枯らし…揃いも揃って傷物です。ミレンが粗暴だけど懐が深いので、みんな身を寄せてるんですね。

漢同士のアイコンタクト、漢の背を追う若人、疲れきった男女の優しい交わりなど、ドラマはみどころたっぷり。三つ巴追跡劇、籠城アクション、サスペンスまであり、娯楽としても一級品。ラストシーンは、雪山が燃え上がるほどヒートでした。