真っ黒こげ太郎

ラストハザード 美しきジハードの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

4.5
最近モチベやら何やらの影響で映画全然見れてなかったからなー…。
サクッと見れそうなお気軽スプラッターでも見ようかな。と思ったら…




突如として死人が蘇り、ゾンビ化するようになった現代社会。
しかし、死から蘇ったゾンビは生前の記憶を引き継ぎ、ゾンビとなった後でも普通の人間の様に生活できるのだ。
(体が徐々に腐敗したり、生肉以外の食を受け付けなくなるなどの違いはあるが。)
彼らは“半死人”と呼ばれ、人並の生活を送り社会に馴染んでいたのだが、一部の人々や過激派の人間に差別されていた。

恋人に殺されてゾンビ化したアンジェラも半死人達のセラピーに通いつつも生活していたが、豹変した自分自身に戸惑い、全てが変わってしまった事に絶望する日々を送っていた。

ある日、セラピーで知り合ったゾンビ男のルイスの誘いで、アンジェラは“聖母ソルスティス”を崇めるゾンビ達の集いに招かれる。
彼らは「ゾンビが人喰って悪いか!」という精神の元に人間を喰っちまう過激派のゾンビ軍団だった!!!
しかし、その集いを反ゾンビの過激派が襲撃!!!しかもその過激派のメンバーの中にはアンジェラを殺したクソ恋人のジョシュもいたのだ!!!

アンジェラは測らずして、過激派のゾンビ達と過激派の人間達の戦いに巻き込まれてゆく…。




ゾンビが当たり前になった現代社会で、世間のゾンビに対する偏見や差別や、過激派の人類とゾンビの争いを描いた、ちょっと変わり種な社会派ゾンビ映画。
監督は「デビル・ウォーズ/死霊のいけにえ」のマーク・フラットさん。


今作は死人が否応なしにゾンビになる世界が舞台だが、今作のゾンビは体が腐り、生肉しか食えなくなった意外には普通に歩き、会話もする。
今作はそんなゾンビ達が社会的に虐げられ、過激派との血みどろな殺し合いに変貌してゆく様を一人のヒロインを通して描かれる。


前半は徹底的にゾンビ達が虐げらる様が描かれる。
「ゾンビだから」という理由で会社では白い眼で見られ、解雇される。
ゾンビがお店で働いているだけで、過激派の連中は「不衛生だ!」と叫ぶ。
道行くだけで突っぱねられ、過激派には単純に狩りの対象にされる。
ゾンビ達がいじめられ、痛めつけられるシーンは実に生々しく、観ていて物凄いドン重な気分に…。

んで後半、ゾンビ達も反撃に回るのですが、このゾンビ側の反撃シーンまでもが人間側のしてきた事と同じくらい残酷に見える。
生きたまま食いちぎられるゴア描写を挟んでいるのもあるけど、それ以上に殺される過激派の表情が悲痛。


登場人物も善良な人々ばかりが悲痛に死にまくり、イカレた連中ばかりが目立ちまくる。
人間側の過激派は完全にキチガイ集団で、特にリーダーのイカレビッチはゾンビ化した仲間を殺すわ、そこら辺のゾンビをフラストレーション発散の為に狩るわで完全にサイコパス。
ゾンビ側の過激派もヒロインに怪しい儀式を施すわで、どいつもこいつもろくな奴がいない。

クライマックスでは人間側の過激派もゾンビ化して殺し合う、実に不毛な戦いに…。
同監督の「デビル・ウォーズ/死霊のいけにえ」で見せたバイオレンス&残酷シーンはこの頃から冴え渡っていて、クライマックスではブルータルで血みどろなド突き合いがこれでもか!と言わんばかりに描かれる。


その一方で、ヒロインがどちらにも属さず自分なりに道を見つけたり、過去のキチガイ恋人とケジメをつける物語をガッツリ描いているのも面白い。
ラストでヒロインが恋人に復讐する様は実にスカッとして、カタルシスを得られる。
「死霊のいけにえ」もそうだが、この監督は虐げられたりしてイカレた女性の行く末を血みどろでやりすぎなバイオレンス描写で描くのが好きなのだろうか?w
(多分、それがマーク・フラットさんの作風なんだろうな。)


そんなこんなで、設定も斬新だし、「人種差別」を題材にした社会派なドラマは中々引き込まれる。
低予算ながらスプラッター&バイオレンス描写も中々良く出来ていると思う。

ただ、今作はインディーズ規格の超低予算映画なので、ビジュアルがショボいと感じる場面は沢山あるし、描きたい世界観に予算が追い付いてない感もある。
お話自体も退屈ではないがやや長く間延びしてる。
幸い、お話が面白いので最後まで楽しめたけど、正直109分はちょっと長いと思う。wwwww
後、一番キチガイでクソビッチな女が居るのだが、そいつが余り痛い目を見ずに終わってしまったのもちょっと残念だった。
(他の連中は悲惨な死に方をしたのに…。)


残念な所もありますが、無予算&無名のゾンビ物にしては頑張った方ではないかなと。
ちょっと変わったゾンビ映画や、血みどろスプラッター映画好きなら何かしら得る物はあると思うので、あんま期待せずにどうぞ。
万人にはオススメ出来ませんが、俺は本作、結構な良作だと思ってます。