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愛と憎しみの伝説のもんてすQのレビュー・感想・評価

愛と憎しみの伝説(1981年製作の映画)
4.4
80年代最低作品賞を獲った伝説的なカルト映画
ハリウッドスターの暴露本(著者:娘)の映画化という、絶対に良い方向に評価されないはずの企画が通る不思議な世界ハリウッドの住民を描くドラマ

挙動がおかしい不妊のハリウッドスターが子供を欲しがり、ついに引き取った子供に異常な“しつけ”をしていく...みたいな話
子供に虐待(?)をするシーンを主演のフェイ・ダナウェイが力いっぱい大袈裟に演じるから、なんかドラァグ・クイーンみたいなメイクも相まって随分楽しいことになってしまっている
異常なしつけをされる養女も養女で(ビル・マーレイや山崎邦正みたいな微妙に腹立つ表情をしている)、いちいちジョーンに好戦的で激しくつっかかるので同情心も抱きづらいし、虐待というより奇妙な親子喧嘩に見える

脚本もめちゃくちゃで、本のエピソードを細切れに映像にしているから作品全体に統一感がない
だから緩急が感じられないせいで、ジョーンというキャラクター像が「とにかく機嫌が悪くてキレまくるサイコ女」みたいになっているし、感情が一切伝わってこな過ぎて逆に斬新な見方ができる

「変な映画過ぎて逆に面白い」というのは本作の監督フランク・ペリー(ケイティ・ペリーの伯父らしい)の持ち味で、本作はその中でも一際輝くカルト・クラシックとして永く愛されている

一方で、本作に出演したことをフェイ・ダナウェイは黒歴史として葬っていた(インタビューでもNGに指定していたらしい)が、なんと数年前にグッチのキャンペーンで本人出演のパロディをやっている!BGMは『ボディ・ダブル』のアレ!頭おかしい



『何がジェーンに起ったか?』で散々不仲と言われてきたジョーン・クロフォードとベティ・デイヴィスだけど、個人的にはそこまで憎しみ合っていた訳じゃないと思っている

ジョーンが嫌っていたのはベティではなくノーマ・シアラー(旦那が有力者だった事へのやっかみ?)、ベティが嫌っていたのはジョーンではなく、本作のジョーンを演じたフェイ・ダナウェイ
ベティ曰く「フェイは撮影には何時間も遅れてくるは態度は最悪だわで、もう二度と共演なんかしない」と言い「ジョーン・クロフォードは誰よりも早くスタジオ入りして、一番遅くまで残る女だった」と話している
「人間性は好きになれなかったけれど、役者としてはジョーンはプロフェッショナルだった」というような事を言っていて、つまりベティはジョーンのスター然とした振る舞いが嫌いだったんだろうな

本作の原作者であるジョーンの娘に対してもベティは「あたしはジョーンさんのファンでは無いけれど、あの娘はとんだ恥知らず!引き取ってもらっておいて、あんな不潔な本を書くなんて!」みたいに言ってる
当時のハリウッドって横のつながりと言うか、仲間意識が凄かったらしい
ハリウッドのことをベラベラ外に喋るのは御法度、みたいな風潮があったみたい
ある意味ハリウッドって、最近話題のジャニーズ問題にも近しいものがある気がする
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