イペー

ミラージュのイペーのレビュー・感想・評価

ミラージュ(2007年製作の映画)
4.0
ミラージュスーツは100均で!

過去のトラウマに苦しむ青年が、弟と自分を救うため、そして正義のために立ち上がる。チリ産、DIYヒーロー映画。

幼き日、両親を強盗に殺され、自らも重傷を負ったマコ。たった一人の身内となった弟も、事件の際に性的暴行を受け、完全に心を閉ざしています。

成長したマコは過去を振り払うべく、肉体の鍛錬を重ねる日々。黙々と空手の稽古に打ち込む姿が物悲しい…。体格に恵まれ、いかつい見た目ですが、瞳の奥には深い孤独を宿しています。

たまたま目撃した強盗事件で、美人キャスターを助けたマコ。彼の運命も急転直下。自作のコスチュームで、ヒーローとして闘う事を決意します。
アドバイスしてくれる友人もなし、致命的にセンスに欠けるマコ。せっせと作った衣装がダサいんですよ…。スゴく…。

冴えない青年が、しょっぱい自警団ヒーローとして、小規模な戦いを繰り返す様を、これまた垢抜けない撮影で追う作品なんです。

"キックアス"の様な洗練や、"スーパー"の様な奥行きはありません。
しかし、この作品には上の二作品に負けず劣らずのロマンがある!

…言い切っちゃってから不安になってきましたが、まずアクションのキレが凄まじい。ギミックに頼らない生身の格闘シーンは、馬鹿に出来ない迫力です。カメラワークは野暮ったいながら、実に鮮やかな殺陣を堪能できます。

ストーリーは終盤に至るまで、どことなくトボけた戦いが続きます。マコもメディアに踊らされ、少しイイ気になってる部分もあったのでしょう。
そんな彼が最後の決戦を迎え、本来の目的を取り戻します。
もう周りの目を気にしてはいられない。

今までは徒手空拳で、いかにもヒーローな魅せる戦い。ここからは武器の使用も辞さず、己を懸けた孤独な"男"の戦いに…。

決着は申し上げません。しかし自分の目に映ったのは、他のどんなヒーローにも負けない、ダサくてカッコいい姿でした。
本当のヒーロー、"ミラージュマン"が颯爽と現れる瞬間を、彼の弟と一緒に、確かに見届けました。

熱が入り過ぎて、また長いレビューになりました。我慢して読んでくれた方、あなたこそがヒーローです。(…まとめ失敗!)
イペー

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