Ryan

ゴースト・オブ・ミシシッピーのRyanのレビュー・感想・評価

3.8
「ある考えに固執する連中は表現も激しい」



ストーリー
1960年代のミシシッピー、黒人公民権運動家エバーズが家族の目の前で射殺されるが、容疑者の白人至上主義者ベックウィズは陪審員判決で審理無効となって釈放されたばかりか、住民の英雄となってしまう。30年後、エリートコースを歩む検事補ボビーが挑戦する。


主演 アレック・ボールドウィン
監督 ロブ・ライナー



面白い。
コテコテの裁判映画だが、あまりに不条理な物語構成が思わず"正義"を望む。
OPで音楽と共に人種"黒人"の歴史が数分間に渡って描かれる。そこには史実が登場してくる。そこからの序盤のあまりに不条理な人種差別の壁が一気に観客を絶望に惹きつける。あくまで白人至上主義の時代に戦った黒人の話ではなく、有色人種だから殺しただけで何も悪いことをしていないと本気で思っているサイコパス映画だったと改めて思い知らされる。
これが現実に起きた事件だと思うと胸糞悪い。

劇中で若き検事が1人で難題に挑むがその中で妻の態度や周囲の目が怖い。
身近に白人至上主義がいる感覚という味わった事のない感情が押し寄せてくる。

そして、あくまでサイコパス映画だから正義を求めて神に助けを祈りたくもなるが、非情にもそれすら許さない思想の固執が恐怖でしかない。
劇中のセリフで「ある考えに固執する連中は表現も激しい」というものがある。歴史がそれを証明し、この映画ではそれに疑問を投げかける。

白人至上主義者バイロン・デ・ラ・ベックウィズ役を演じたジェームズウッズがとにかく凄い。アカデミーにノミネートされるのも納得の怖さと偏見と無知。前面に押し出される彼の恐怖な演技は観る価値に値する。

オーソドックスで生真面目映画ではあるが、観る者に訴える力はある。
Ryan

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