horahuki

ブラディ・キャンプ/皆殺しの森のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.6
スラッシャー→ジャーロの逆輸入!

15年前に殺人が起きたキャンプ場で若者たちが消されていくという、『13日の金曜日』に影響を受けまくったデオダート製ジャーロ。イキッた男キャラが女性陣に向けて言う「忘れられない週末にしてやるよ👍」を有言実行していくスタイル。多分誰も忘れないと思う…。

次々に殺されていくんやから他の奴らサッサと帰ったらいいやん!っていう定番ツッコミを「誰も殺人に気づかない」っていう設定で強引に跳ね除ける姿勢が最高!若者たちは殺人が起きてるのにノーテンキにワイワイ遊び、キャンプ場経営してる熟年夫婦は離婚するだの何だので揉めてるしで誰も違和感なんて気づかない。むしろ熟年夫婦が怒りにかられて互いに殺し合う始末…。殺人鬼さんにとっては最高の狩場!

15年前に暴れまくった「呪術師」と呼ばれる殺人鬼の再来…そんな『血のバレンタイン』的なのが犯人だと作中では言われ続けるんだけど、熟年夫婦にしても、夫が人を瞬殺できるレベルの罠を森中に仕掛けまくってる程度にはイカれてるし、若者は若者で流石に気づかないのおかしくない?ってレベルに楽しそうに遊んでるので、誰が犯人なのかをずっと撹乱させていくような内容。

そんな感じで、大筋がスラッシャー寄りとはいえ一人の殺人鬼が次々に若者を血祭りに上げていくストレートさはなく、誰が犯人なの?的な撹乱により、ジャーロらしくミステリとして物語を構築している。

アメリカ性とイタリア性の融合を目指したと、ストーリーを書いたアレックスカポネが語っているように、本作はジャーロから多大な影響を受けた『13日の金曜日』に代表される米国製スラッシャー群の諸要素をジャーロに逆輸入した作品。更には撮影地についても、もともとカナダで撮影してアメリカだ!と言い張る予定だったところを、予算の関係で本国イタリアで撮影してアメリカだ!と言い張るという、結果的に撮影地的にも逆輸入感出まくりなことになってるという😅

カナダまで出してくるところ考えると、「誰も殺人に気づかない」設定もカナダ産ジャーロ『暗闇にベルが鳴る』からの逆輸入やろね。ただ、15年前の殺人鬼の再来を受けて既存の関係性に亀裂が入り、本命の殺人鬼の預かり知らぬところで人が死んだり殺されたりしていく…という本国の巨匠バーヴァ『血みどろの入江』のようなカオス空間を作り出すあたり、色んな要素のコラージュ感が凄い。

それと面白いのが小屋の中にある真っ直ぐな動線への偏愛。前後を変えたり、カメラを動かすスピードを変えたり、左右の空間を利用したり、多種多様な見せ方でこの特に何にもない一本道をスリル、コミカル、覗き見的フェチズム等様々な感情を湧き上がらせる装置化させている。でも同年に『アクエリアス』があることを考えると、パワー不足感があるな〜と。

あとこれもヒッチハイク映画だったから笑った😂
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