ウサミ

不思議惑星キン・ザ・ザのウサミのレビュー・感想・評価

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)
4.3
設定や世界観、キャラクターなど、かなり歪でヘンテコながら、次第にのめり込み、最後には何か壮大な作品を観てしまった…!という後味のある、かなりユニークな作品。
起承転結の「起」までの圧倒的なテンポ感、不条理感。そこから未知との遭遇を経て、不思議惑星キン・ザ・ザのルールが分かってくる快感。
冒頭の20分くらいで完全に映画の世界に入り込めた!

コメディ、B級映画、といった類の匂いを纏っているが、SF映画としての世界観は徹底されており、小道具や背景、キャラクターの細部に至るまで、「異文化」が詰まっている。
地球の常識から外れた世界の放浪記は、裏切りや騙しに満ちており、意図せずこの世界に引き摺り込まれた地球人の2人は何度も翻弄される。
キン・ザ・ザ特有の倫理観、差別意識に振り回されて辟易しながらも、ついつい異世界と「地球」を重ね、いつしか身近さや普遍性を見出してしまう展開も、SF映画としてこれまた味わい深く、奥行きがある。

マッチ一本が素晴らしい財だったり、ステテコや鼻につけた鈴が階級を表していたり、「クー」の一言でたいていの表現が可能だったり… 異文化との邂逅はやっぱり面白い。

いつしか、理不尽な侵略と強欲にまみれた砂の惑星と、地球の「何か」を重ねずには居られなくなる。もしかしたら本作は何らかの風刺なんじゃ無いか…?というシニカルさを感じた。
とはいえ、作品に説教臭さが無いので、そういう社会派なメッセージが前のめりに出てくることはなく、シンプルに異世界での放浪SFとして、素直なエンタメ映画としてみても、抜群に楽しめる。

「心を読んでみろ」
「妻は今頃どうしているだろうか…」
「もっと表層の部分を読んでくれ」
とか、サラッと良いスパイスを入れてたりして、中々好きが爆発する良い映画だった。
ウサミ

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