JAmmyWAng

ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激闘のJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

4.5
カンフーとはある種の格式的な武術でありますから、そこには肉体的にも精神的にも何らかの形式という「コード」が存在しているというか、そのコードこそがカンフーを形成しているとも言えるワケですし、またカンフーに限らずともこの世界は良くも悪くもあらゆるコードに溢れている。

この映画は、勝手なコードを押し付けられる理不尽さや、不条理なコードに絡め取られる遣る瀬無さに対して、そうした枠組みをある種の束縛と見做して感情的に打破されるべきものとして捉えるのではなく、その一見不自由なコードをも引き受けて正しく機能するものがこの世界にはあるでしょうよと、それこそがカンフーでしょうよと言っていて、徹底してコード自体を受容する行為の中にリアルなカンフーを見い出していくワケであります。

クッソ狭い路地に体を押し込めたリュー・チャーフィーとワン・ロンウェイの超絶名バトルが今作の全てを背負って繰り広げられるワケなんだけど、これは「コードによる制限」にまつわるあらゆるフラストレーションを空間的に置き換えて、それを徳と倫理が織り成す武術的境界線というものにカンフーによって昇華していく失禁レベルのとんでもねーヤツ。

その中で珠玉の技が壮絶にぶつかり合う有り様を目にすれば、物理的/精神的なあらゆる息苦しさによるネガティブな感情は否応なく乗り越えられてしまうワケだし、そしてむしろそうした枠組みに身を置いてこそ真に躍動するカンフーというものを、極めて直接的に描けてしまうラウ・カーリョンの手腕には最早頭蓋骨ごと脱帽する他ない。

コードを引き受ける/ブレイクする事による快感を、そのどちらをもカンフーそれ自体として描けるこの人はもう最強やないですか。凄すぎて最早言葉が無いですし、僕はこの人を生き返らせるためなら会社を辞めてドラゴンボールを7つ集めに行きますよ。
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