継

長く熱い週末の継のレビュー・感想・評価

長く熱い週末(1980年製作の映画)
4.0
次々に登場する人物の相関や思惑を「点」のように無造作に散りばめ、30分近くを経てから漸(ようや)くそれらを繋ぎ始めて「線」を結び、ストーリーたる「絵」の全貌を悠々と明らかにしていく仕組み。

初見では理解不可能。
ソフトはそれを見越して丁寧な解説書を同梱してるんだけれど、試しに読まずに観た最初は何が何だかサッパリ分からず(笑)。劇中にkeyとなる【ワード】が出て来て、初めて“あぁそういう話か”と合点がいった次第。

サントラCD付きソフトを購入したくらいに印象的なシンセのテーマ♪がスリルをガンガン煽って格好良いんですが、元々台詞が多くない劇中で時に張り切りすぎて耳障りな場面もチラホラ(笑)。台詞の少なさは同時に、イギリス人から視たアメリカ人の姿を端的に浮き彫りにしていたりもしていて中々面白いものでした。

'80年, 英国製.
次第に明らかとなる「絵」や主人公の台詞の端々に滲むプライドには剛健な誇りが感じられて、たとえそれが裏社会であってもシカゴやシチリアの「それ」とは紛れもなく異なる、ロンドンの威風堂々たる風格(それが心許ないものであったとしても)に満ちていました。
それだけに、妻(ミレン)に抱かれるシーンの凋落ぶりは目を被わんばかりの悲哀に溢れていましたが。。

とても好きなタイプの物語でした。
ロンドンの裏社会を牛耳らんとするマフィアのボス, ハロルドの半生。
その姿はEU離脱が正式に決まった現在のイギリスの姿を、すなわちその虚勢を視るようでもあって、今改めて観るとクライマックスの笑みに何やら予見めいたモノすら感じられて背筋が寒くなる思いが。

尻切れトンボ的ではあるけれど、実の所「あそこ」で締め括る事に作り手の意匠があるのは明白で、ハロルドと妻の「その後」は描かずとも最早分かりきった事。
ハロルドとEU離脱派の自信が奇しくも重なって見えたのは自分だけ?か分かりませんが【ワード】の地からは早くもキナ臭いnewsが漏れ聞こえてきています。。
当初観た頃と違い、イギリスの「その後」を案じる思いがよぎる、もしかすると今こそ観られるべき映画なのかもしれません。
継