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五月のミルのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

五月のミル(1989年製作の映画)
3.9
1968年の南フランス。五月革命で揺れる中、母親の葬儀のために田舎の家に集まったブルジョワ一家の数日間の騒動を叙情詩のように描いたコメディ。
監督・脚本はルイ・マル、
共同脚本はジャン・クロード・カリエール。
撮影はレナート・ベルタ。
原題:(仏) Milou en mai、
(英) May Fools (1990)

長男のミルから母親が突然の発作で亡くなったと連絡を受けて、親族が葬儀に駆けつけるが、彼らの話題は遺産をどのように三等分するかという話ばかり。
・屋敷やブドウ畑を手放したくないミルは怒って、沼にザリガニ捕りに出かけたり(捕り方が面白い)、
・夫人の遺書に四人目の相続人の名前があって、ミル以外の人は理解できなかったり、
・革命の影響で葬儀屋までもがストをしたため、遺体を庭に埋めることにし、葬式を一日延期して、ピクニックに興じたり、
・革命の解放的な雰囲気の中で、ミルが弟の妻と、ミルの娘のカミーユが公証人と、二男の息子ピエール・アランがマリー・ロールと、クレールがトラック運転士と親しくなったり、
・やがて、革命でブルジョワは殺されると知らされた一同が、森の洞窟へ逃げ込んだり…。

~亡くなった当主~
・ヴューザック夫人(ポーレット・デュボー)

~①長男(主人公)と関係者~
・長男ミル(ミシェル・ピッコリ):ちょっと変わり者。女好き。
・娘カミーユ(ミュウ・ミュウ)
・娘の夫ポール(ユベール・サン・マカリー):仕事人間。
・娘夫婦の娘フランソワーズ(ジャンヌ・エリー):好奇心旺盛
・娘夫婦の息子たち(双子)

~②二男と関係者~
・二男ジョルジュ(ミシェル・デュショソワ):ル・モンドの新聞記者
・後妻リリー(ハリエット・ウォルター)
・息子ピエール・アラン(ルノー・ダネール):パリで学生運動に参加している。
・息子の友だち、トラック運転手のグリマルディ(ブルーノ・ガレット):共産党嫌い。

~③娘夫婦の娘と関係者~
・娘夫婦(既に交通事故で亡くなっている)
・その娘でミルの姪のクレール(ドミニク・ブラン):レズビアン
・クレールの女友達マリー・ロール(ロゼン・ル・タレク):いつも何処でもバレエを踊っている。その姿が美しい。

~その他の登場人物~
・公証人ダニエル(フランソワ・ベルレアン)
・当主のお手伝い、アデル(マルティーヌ・ゴーティエ)
・工場を占拠されるブテロー夫妻(エティエンヌ・ドラベール、ヴァレリー・ルメルシェ)

「俺はここで死にたい。俺の子ども時代を奪われはしない」

「結婚は廃止だ。自然に任せてどの女とも愛し合う。
どの男ともね。
結婚は愛の墓場だ」

「労働という奴隷制度を廃止し誰もが職業を選べる」(と理想社会を語りながら、みんなでピクニックに向かう(双子が革命の旗を振って最後をついていく)が、道すがら、一人汗を拭きながら墓を掘っている使用人には全く気づかないという印象的な場面の後、更にワン・シーン)

「愛から遺伝子を取り除けば、純粋な快楽が残る」

「現実をみろ。ここはカルチエ・ラタンじゃない。殺されるぞ。話し合いはない。スペイン内戦を思い出せ。殺してから話し合う。それが革命だ」

「美しい風景は、美しい瞳を与えてくれる」

~フランソワーズは「地下鉄のザジ」のザジのような味つけ役~
「おじいちゃんピルって何?」
「最低賃金って何?」
「クレール伯母さんはなぜ友だちを縛るの?」
「おじいちゃん、精液って?」
「おじいちゃん。レズって何?」

チェーホフの「桜の園」などをモチーフにしているとも言われていて、ルイ・マル監督の円熟の妙で、ゆったりと"ピクニック"気分で楽しめる。
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