mumbleboy

剃刀の刃のmumbleboyのレビュー・感想・評価

剃刀の刃(1984年製作の映画)
4.1
ここでの評価は低いですが、個人的には大好きでした。

多分一度は観た事があると思うのですがかなり昔だったのでほとんど覚えてなかったですがこれまではまあまあ好きだったという印象でしたが今回観てすごい好きな作品と再認識しました。より多くのものを観たからか自分が内容をより深く理解できる人間になったからかはわかりませんですが今回はすごく響きました。もちろん完璧な傑作とは呼べないと思います。初頭の第一次世界大戦シーンとかスピルバーグの足元にも及ばないですし、後半に畳み掛けるドラマ展開も作品全体としてちょっとアンバランスに感じてしまいましたがその部分があってこそエモいのでどうすればより良かったかはわかりませんが。最近は映画ばっかり観ていてめっきり読書の量が減りましたが久しぶりに映画を観て原作を読んでみたいと思いました。欧米人がインドやチベットへ旅をして言わばこの言葉はあまり好きではないけど自分探しをする、みたいな作品は文学でも映画でもいくつもありますが今作の原作小説はそれの先駆け作品の一つではないかと思います。ビートニクスよりもかなり先に東方の文化を題材にしています。これは読んでみないとわかりませんがこの作品のある意味のクライマックスは後半の人間ドラマではなくて主人公ラリーがヒマラヤの雪山頂で悟りを開いた時だったのではとも思います。映像作品としてはラリーの内面で何が起こっていたかは伝わらず外側から何かに到達したんだなと推測するしかありませんでしたが。この小説もすごく時代を先取りしていたと思いますが主演のビル・マーレイも先取りというかすごくユニークなキャリアをたどってきた人だなと思います。基本はコメディ俳優だと思いますが「ゴースト・バスターズ」みたいなハリウッド エンタメ大作にも出てるのに今作の様なシリアスな言わばアート系映画に出演したりとかはこの時代にはかなり珍しかったのではと思います。近年ではウェス・アンダーソン作品の常連になっていてそんなウェス・アンダーソンの最新作「フレンチ・ディスパッチ」はアメリカ人がパリを舞台とした作品で今作と似通ったというかウェス・アンダーソンも今作にインスパイアされた部分は少しはあるのではないかと思います。他にも「あなただけ今晩は」もアメリカ人キャストがパリを舞台にした映画ですがシャーリー・マクレーンがパリの娼婦を演じる様も今作でテレサ・ラッセルが娼婦を演じるのと個人的には重ねって見えました。今作のテレサ・ラッセル、おそろしく美しくて絶対他の作品で見た気がするのですがフィルモグラフィーを見てみるとピンとこないし、今作以外で良さそうな作品に出てないのが意外です。あまり万人ウケする映画ではないと思いますが個人的にはとても響きました。又違うタイミングで観たらそうではないかも知れませんが今回はズキュンとやられました。

因みに今作アマゾンプライムでは今月末31日に配信終了なのでピンと来た方はすぐに観ることをお勧めします。
mumbleboy

mumbleboy