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袴田巖 夢の間の世の中のfilesのレビュー・感想・評価

袴田巖 夢の間の世の中(2016年製作の映画)
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はたして「死刑囚」という重いキーワードや他人の絶望に耐えられるんだろうか、とおそるおそる観ました。
結果、とても良い映画でした。こういう出会いがあるから次々と観てしまうのよねぇ。

「袴田事件」の死刑囚として48年間刑務所にいた袴田巖さん。冤罪の訴えにより、2014年に一旦刑務所から釈放されました。正確に言うと、死刑執行の一時停止です。弁護側と検察側のせめぎ合いがあって裁判の決着はついておらず、8年後のちょうど今、現在進行形で再審が行われています。

この映画は、2014年の釈放後に巖さんが自宅で過ごす日々を追った作品です。
安易なドキュメンタリーは作り手の意図が入りすぎて白々しくなってしまいがちですが、この映画は、本当に丁寧に、巖さんと姉・秀子さんの表情を撮っています。巖さんの心と立場がまだ渦中にあるからこそ、作為的に撮るのがいかに乱暴かを制作側が分かっていて、とても淡々としています。そして、秀子さんの驚くほどの人間性の豊かさといったら。巖さんを取り巻く数々の理解のうえに成りたっている作品です。

日常を撮ったドキュメンタリーということもあり、「百聞は一見にしかず」として、内容はあまり語らないことにします。ただ、タイトルの印象よりはずっとおだやかで、温かさがありつつも、考えさせられる映画です。機会があったら観てください。事件のセンセーショナルさや政治性を強調した文章をたくさん読む前に観ることをおすすめします。先に生身の人間をみた方がいいと思います。
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