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袴田巖 夢の間の世の中のeulogist2001のレビュー・感想・評価

袴田巖 夢の間の世の中(2016年製作の映画)
3.4
冤罪事件は警察=国家権力は過ちをしないという風潮と警察のメンツ重視の閉鎖的な昭和の半ば頃にあっては相当数が捏造されていたに違いない。特に殺人事件ともなれば、そうした圧力は相当なものだろう。

しかしながら不幸なことにそのスケープゴートにされた方には取り調べのやり方は言うに及ばず、もはや対抗すべき術もなかった。特に被差別部落の方や素行不良な若者は社会的な差別や偏見を味方にしてターゲットになりやすかった。

冤罪事件は支援者、特に家族の支援が欠かせない。冤罪の当事者もさることながら、家族にとってもその負担は計り知れない。

取り調べの可視化や監視カメラの普及により、客観的証拠が残りやすい時代にはなりつつあるけれど基本的な姿勢、つまり疑わしきは罰せずの原則は日本においてはまだまだ世論として大勢ではない気がする。権力者のメンツは裏返すと世論の裁くことへの意識の高さも大きく影響するだろう。

犯人探しより、冤罪を生まないことを是とする社会が望まれる。また犯罪を個人の責任にのみ帰する感覚や犯罪者の家族に対する差別を無くす意味でもこうした作品が広く鑑賞されることの意義は大きい。
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