とうじ

トゥー・ラバーズのとうじのレビュー・感想・評価

トゥー・ラバーズ(2008年製作の映画)
4.5
フロイトによると、幼少期にエディプスコンプレックスを克服できない男性というのが一定数おり、その人は捩れた女性像にしか恋に落ちることができないという。その女性像とは、すでに恋人がいたり、性的に淫らだったり、精神的に不安定だったりするのだが、そのような男性達が本当に呪われているのは、彼らは自分が「女性像」に恋に落ちているという事を頑なに認めることができず、自分が恋するその人こそが一世一代の魅力的な女性であり、その人と別れてしまえば自分の価値がなくなるとまで、深く相手に依存してしまうのである。つまり、恋する人と一緒にいるときは一種の躁状態、別れると深刻な鬱状態になる事は免れず、大抵女性の方はろくな人じゃ無いので、男性をとことん傷つけてしまう(男性のほうも女性を傷つけてしまうのはいうまでもない)。
そういう男性というのは、つまり、大人になれていないというのが根源的な問題なのであり、本作のホアキン・フェニックス演じる主人公はそういう人である。そのような、奇形の純愛を抱いてしまう人は、孤独を選ばないとしたら、どう人間関係を構築していけばいいのか?
それは、「妥協」一択しかない、そしてそれに付随する苦悩はものすごく自己中心的なものになるだろうと示すアンチ・ロマンチックなラブストーリーが本作であり、かなり見ごたえがある。
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