日本劇場未公開。ドストエフスキー『白夜』がモチーフ。
あらすじ
ブルックリン郊外で実家のクリーニング屋を手伝うレナード。フィアンセと別れて、数か月前に家に戻ってきた。
躁うつ病を患っている。普通のときもあれば元気なときも、そしてふいに海へ身を投げることも。
ある日、両親から紹介されたピュアで真面目なサンドラと出会い良い雰囲気に。
しかし別の日マンションに越してきた危なっかしいミシェルにも強く惹かれてしまい……。
感想
レナードはとても愛に飢えている。誰かを愛したいし愛されたい。フィアンセを忘れたい。自分に自信がないが、目の前の相手にはつい断言してしまう軽薄さがある。よく言えば誰にでも優しい性格でもある。
そのせいか二人ともに好意を示してしまい、あっちに良い顔をされれば行き、こっちに頼まれれば応じる。
「君は誠実そうだ」と言われていたがレナードこそ悪気はなくても不誠実で卑怯ではある。言いづらいことを伝えることを徹底的に避け、結果周囲を騙している。彼も孤独だったから、では済まされない域。
恋の結果自体は、でしょうねという予想通り。
だがその手のひらをくるくる反すことが最終的には幸いしたか。本意ではないかも知れないが、それもまた十分幸せな結果と思える。状況に合わせて選択を変えること自体は間違いではない。
ただこのケースが丸く収まったのは偶然が重なった奇跡でしかない。この先本当に平和に暮らしていけるだろうか。いつかサンドラに、本当には愛していないことがバレたり、いい加減な言動に愛想を尽かされたりしそう。
母の愛が深く大らかなのが素晴らしかった。子どもが幸せならそれが一番で、しかも彼にはそれしか選択できないと悟っているので、問い詰めたり反対したりしない。いつでも戻ってと言えたのは、きっと父も説得できるという確信もあるからだろう。
躁鬱病である設定は別に重要ではなかった。破綻のきっかけというだけで、彼の行動に影響しているのは時々投身したくなる点だけに見えた(それが大問題ではあるが)。人間関係上の八方美人は、別に病気のせいというより彼の性格によるように思える。
ミシェルのほうがよっぽど精神不安定に見えたが、結果からすると辛い恋をボロボロになりながらも耐え抜き幸せを掴んだ女性ということになった。
彼らの人生はぎりぎりのところで逆転した。絶望しても生きていれば何とかなることもある。苦しいことは色々あるけど十分じゃないか。カヴァレリア・ルスティカーナの曲が、まあ人生なんてこんなもんだよねと思わせる。