三樹夫

フレンチ・コネクションの三樹夫のレビュー・感想・評価

フレンチ・コネクション(1971年製作の映画)
4.4
黄金の三角地帯からフランスを経由して流れてくる麻薬ルートの捜査に警官バッジを持っているだけの狂犬が乗り出す。主演ジーン・ハックマン、監督バイオレンスドキンちゃんことフリードキン、カースタントはアメリカの車番長ビル・ヒックマンと面白い面々が集結し、やたら血の気の多い作品が誕生した。
この映画には捜査と追跡と殺伐とした何かしかない。余計なものをそぎ落としていった結果もの凄いハードなものが残った。ドキュメンタリータッチが用いられ、セットを作らずオールロケ、NYの街角に役者ぶち込んで手持ちカメラでただ撮っただけ。光量が少なくて済む高感度フィルムが使用されているためざらついた映像になっており、それが殺伐としたロケ場所と映画の内容にマッチしている。とにかくNYが汚い。だがそれが良い。
ひたすらゴミ溜めみたいなNYが映るが、マルセイユのおフランスのエレガントな画と、ワシントンの都会的なクールな画が緩急の緩となっている。
散発的に突然挿入されるバイオレンスは印象に残る。バケモンの雄叫びみたいな爆音の銃声が鳴り響き、大量に血を吹き出し人が死ぬ凄惨なバイオレンスだ。

運転手POVのカースタント撮影では警察に交通整理だけさせて市に許可を取らず、事情の知らない一般車両が普通に走っている中とんでもないスピードで逆走かましてそれを撮るという、安全と人間としての倫理観を生贄にして映画史に残るカーチェイスシーンを生み出している。しかし、いくらドキンちゃんといってもまだ人間の心が残っていたのか、カメラマンは子持ちばかりだったので死んでも悲しむ人のいない独身のドキンちゃんが後部座席に乗りカメラを回している。はねられそうになる乳母車の女性は一般人ではなく撮影用に計算されて撮られていると、ドキンちゃんの幾ばくかの人間アピールがある。
カースタントを担当しているビル・ヒックマンは『ブリット』でもカースタントを担当している。
殺伐とした中で全力で走る、車で猛スピードでぶっ飛ばすのダイナミズムは観ていて快感がある。

毒を制するには毒だということで暴力刑事が捜査に乗り出すが、このおっさんが作中一番の犯罪者に見える。やってること無茶苦茶だが、モデルとなったおっさんも同じような感じだったらしい。モデルのおっさんはアドバイザーとして撮影に参加しており、そこにドキンちゃんが悪魔合体したことでジーン・ハックマンはこの世の地獄を味わうことになる。そして「『フレンチ・コネクション』は1回しか観ていない」と意味深な発言を残している。
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