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肉体の森のemilyのレビュー・感想・評価

肉体の森(2010年製作の映画)
4.3
1865年の南フランス、とある村にたどり着いた浮浪者の青年ティモテは、医者の娘ジョゼフィーヌの美しさに惹かれ、言葉がしゃべれないふりをし、家に近づき食事を食べさせてもらう。彼女に催眠術をかけ、犯したのち、彼女は彼について家を出、森の中で肉体を解放し、彼の思うまま性におぼれていく。

白い肌が透けるように美しいジョゼフィーヌ、彼女に触れる爪の中が真っ黒な汚い手、彼女にキスする汚い真っ黒の口の中、緊迫感のある二人の距離感は、催眠術とも魔法とも得体のしれない言葉の魔術により、信仰深い彼女の心の隙に滑り込み、惑わしていく。純白のドレスからあふれる純粋無垢な少女は男により汚されることを心のどこかで求めていたのだろう。彼の魔法により火のついた奥に潜める体が求める欲求を、広大な森の自然美の中で体が解き放たれていく。二人のまぐわりは本能的で人間らしく、薄暗い自然光の中でどこまでも透明で動物的である。

 魔法をかけたのは彼なのか?それとも彼女なのか? 

 催眠術が解け我に返った彼女は、動物のように欲に素直になり、そうしてまた催眠術の世界に戻っていく。拒否すれば拒否するほど体が求め、そのバランスはどんどん崩れていく。彼女の魔力に魅せられたティモテも純粋無垢な青年であり、その淡い恋心は”女”の不条理に上塗りされ、パワーバランスが追い越されてしまう。体の欲求と心の欲求に囚われてしまった二人、それはどちらの魔法なのか?催眠術なのか?現実なのか?その境界線はぼやけたまま、さらに先行く欲望の果てに、女の”賢さ”が大人への成長へとつながり、男は愛に溺れ、身も心も囚われの身となってしまう。

 影の中の光なのか、光の中の影なのか、それは心と体のように不条理でなんとも不思議な感覚を残す。言葉にならない感覚は女のまっすぐ見据えた顔と共に脳裏に、そうして体に残すのだ。それは観客の奥にある本能を刺激するように・・
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