櫻イミト

ジキル博士と殺人ロボットの櫻イミトのレビュー・感想・評価

ジキル博士と殺人ロボット(1964年製作の映画)
4.0
スペインのジェス・フランコ監督による初期ゴシック猟奇ホラー4部作の3本目。原題は「EL SECRETO DEL DOCTOR ORLOFF(オルロフ博士の秘密)」。

ロボット工学の権威であるオルロフ博士は死の直前、自身の秘密研究を弟子のジキル博士に託す。それは超音波によるロボットの遠隔操作技術だった。ジキル博士はさらに研究を重ね、死体を蘇生させロボッとして操る技術を開発する。その頃、ジキル博士の住むドイツの古城をオーストリア在住の姪メリッサ(アグネス・スパーク)が訪問する。この城で最近亡くなった父親アンドロス(ヒューゴ・ブランコ)の遺産相続の為だった。巷では若い女性を狙う連続殺人が起こっていた。ある夜メリッサが亡父の使っていた書斎に足を踏み入れると、そこで亡き父とそっくりの男を目にする。。。

全体的な完成度はフランコ監督のゴシックホラー前2作よりも上回っている印象。第1作「美女の皮をはぐ男(原題:恐怖のオルロフ博士)」(1962)と同名のオルロフ博士が登場し続編的な扱いで、犯罪の設定は似ているが物語は連続していない。

モノクロの映像は美しくホラーのムードも満点。前作「悲しい奴」(1963)で殺人鬼を演じたヒューゴ・ブランコが本作では殺人ロボットを演じ、その生気のない無表情な顔はホラーなインパクトがあった。全編を通じてアップ・ロングのメリハリも効いていて映像は申し分ない仕上がりだった。

シナリオも巧く出来ていて、父の死を巡るミステリーとその真相を探る娘の動きを軸に、殺人ロボットの異様さを散りばめつつ、事件をめぐる愛憎劇の解き明かしが為されていく。クライマックスには父娘の運命の悲劇も練り込まれて充実度の高い一本となっている。

ただ、前2作に見られたエロス&猟奇性やフランコ監督ならではのジャズ劇伴は抑えられており、映画完成度の高さの反面、衝撃度は控えめ。安定して楽しめる良質なゴシック・ホラーと言える。

※ヒロインを演じたアグネス・スパークは、カトリーヌ・スパークの実姉

※前作と同じくドイツの古い村ホルフェンが舞台となっている
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