チッコーネ

バイ・ジュン さらば愛しき人のチッコーネのレビュー・感想・評価

3.5
監督にとっては30代を迎える直前の処女作で、どこか自叙伝のような雰囲気あり。
モデル出身なユ・ジテの俳優デビュー作でもある。
若者による若者のための青春映画といった趣、自暴自棄でありながら悲観に傾かず、自らへ向けたシニシズムを失わない登場人物たちは、可愛げたっぷり。
役者陣の演技はいい意味で伸び伸びとしており、撮影や美術も低予算なりに細かな工夫が見られる。
製作陣の作品に対する愛情が、伝わってくる佳作だった。

少し前に観たK-POPのドキュメンタリーに「今日のシーンを作ったクリエイターたちは一様に、R&BやHIP HOPをルーツとしている」といった趣旨の紹介があり「ふ~ん」と思っていたのだが、本作の劇伴はすべて既製曲で、しかも欧米のロックばかり(MAZZY STAR、BLUR、PRODIGYなど)。
民主化以降に青春を過ごした韓国の若者たちの中に、オルタナ志向のリスナーもいたんだなぁと、本作で確認できた。