半兵衛

気のいい女たちの半兵衛のレビュー・感想・評価

気のいい女たち(1960年製作の映画)
3.9
邦題や解説から痛快に生きていく若い女性たちの活発なドラマといういかにもヌーヴェルバーグらしい作品を想像していたのに、いざ鑑賞するとアンリ・ドガによる撮影は軽快だし女優たちの演技はポップだけれど他のヌーヴェルバーグの作家とは違う不穏な作風に鑑賞しているとこちらまで戸惑ってしまった。強いて言えばシャブロルが後年作っていくミステリー作品の雰囲気に近い。

序盤は電気屋で働く四人の女性たちの軽やかなドラマが展開していくものの、音楽は怖いし随所に登場する男の変態的な視線やスケベな男どもによるセクハラ行為が彼女たちに上から押し付けられているように描かれるので前述のとおり何を見せつけられているのかと戸惑い気味に。そして物語が進むにつれてその行為は更にエスカレートして、終盤のプールでの四人の女性の一人をナンパしていたおっさんによるセクハラ大暴走で極まってくる。あの場面でおっさん二人組がやっていることは男性から見ても醜悪で、『ソナチネ』で北野武がやっていたクレーンによる水責めをやってもらっても腹の虫がおさまらないレベル。

そこから四人の女性の一人をストーカーしていた男性が彼女たちを助けて、ストーカーしていた女性と仲良くなり二人の恋愛ドラマがはじまるという予想の斜め上をゆくお話になりもっと困惑していくことになるがその流れから起こる終盤の出来事に唖然(ただし二回目に見るとそこへの伏線が随所に出てくることに気づく)。そしてそこから男性に上から目線で自分達の生き方を強制され社会に封じ込められるように生きていく女性たちのやるせなさやどうしようもなさが伝わり、ビターな気分に。

ラストの今までの流れを無視したようなオチもびっくりだが、そこでの掟破りのカメラ目線から社会への挑発と犠牲になってきた自分達もいつかはやるよという決意が怖いくらい感じられて背筋が凍る。

まるで男たちに強制されて働かされているような息苦しさに満ちた電気屋や、異様に長く描かれる動物園、全然楽しそうではないパーティーといったディテールも社会にがんじがらめになった女性のドラマを底無し沼のようにどろどろにしていく。

終盤での森の中を歩く男女をとらえたカメラの距離といい画作りといい怖い。
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