KANA

気のいい女たちのKANAのレビュー・感想・評価

気のいい女たち(1960年製作の映画)
3.7

久しぶりにシャブロル。

パリの小さな商店に勤める4人の若い女性たち。
大した武器を持つでもないごくフツーの彼女たちは、それぞれが自分流に欲望に忠実に生きている。これぞいかにもな、生パリジェンヌ。
退屈で仕方なさそうな勤務時間と刺激的で大はしゃぎな夜のギャップに笑える。

明るく奔放なジャーヌ(ベルナデット・ラフォン)よりも、静かでミステリアスなジャクリーヌ(クロチルド・ジョアーノ)のほうがずっと魅力的に映った。

『大人は判ってくれない』然り、『死刑台のエレベーター』然り、『いとこ同士』然り、アンリ・ドカエの捉える、じわっと滲む潤い…或いは温もりを感じるような夜のパリ、そして闇の中の光が詩的でとても美しい。
だからなおさら物静かなジャクリーヌのアンニュイな瞳や艶かしい首筋が映える。

ただ、シャブロルは彼女たちの弾ける若さを"優しく"ではなく"残酷に"見つめる。

今だったら絶対セクハラで訴えられそうな社長
何かっていうとまとわりついてくる中年ナンパ男2人組(プールのシーン超不快!)
ジャクリーヌをひたすらストーカーしてくる怪しすぎるバイク男

『アデュー・フィリピーヌ』のような何気ない戯れを描いた瑞々しい青春ものかと思いきや、不意打ちの展開!(いきなりヒッチコック調)

陽キャより陰キャのほうが実は狙われやすいとはいうけれど・・

動物園で彼女らがキャッキャと歯を剥きながら向かい合う虎は、何をしでかすかわからない残忍な魂のメタファーだった。

ドカエカメラの撮るしっとりした夜のパリとクロチルド・ジョアーノの神秘性を
敢えてキモすぎるオジサンたちの低俗さで汚すこのセンス。

ブニュエルに似た系統のサディズムを大いに感じた…
シャブロル、ブニュエル、どっちも美味しそうな名前w
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