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借りぐらしのアリエッティのRyoSのレビュー・感想・評価

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)
4.2
アリエッティと翔の庭での会話が秀逸。
セリフ単体は固めながら、そのセリフの切り返し方になんとも言えない良さがある。前向きなアリエッティと諦観な翔から出る主張への的を射た返答が、お互いがお互いの知らない領域を認識して溶け合う瞬間を浮かび上がらせている。今まで観た映画の中でも屈指の名セリフ。

昔からジブリあるあるの活発な少女に対し、病弱気弱な少年という非宮崎駿的ジブリキャラ、そしてお互いがお互いに淡い影響を与えつつ、ラピュタやもののけ姫のような大冒険にならない切なさがたまらない。

樹木希林のセリフにならないようなオノマトペが素晴らしい。セリフじゃなくて空気の音、人間が存在しているときに人間から聞こえてくる音を絶妙に演じている。

冒頭、アリエッティ一家のシーンのセリフ量とトーンだけでキャラを確定させているから、その後父親が意外と話しててもキャラがぶれない。あのぼそっとした感じ、好き。

映画全体としては交流ものドラマものだけど小人という設定自体がいつ何時でもサスペンスを生んでいて、自分が一番好きなタイプの作品。こういうサスペンス下にふと訪れるあのアリエッティと翔の会話、サスペンスに取り囲まれているからこそより輝いて見えるのかも。
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