テオブロマ

借りぐらしのアリエッティのテオブロマのレビュー・感想・評価

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)
3.5
いつ観たのか失念。

映像が美しく動きも生き生きとしていて、特に冒頭のアリエッティのワクワク感が伝わってくる感じが好き。小人の目線からみた人間世界ってこんな感じなんだろうな、人間からしたら取るに足りないものでも彼らには重要なんだな、などと面白く観られる。背景の繊細な描き込みは本当に素晴らしい。花が咲き乱れる庭でアリエッティと翔が話すシーンが好き。小人目線で見る世界が楽しい。水滴って人間からしたらすごく小さいのに、小人視点だとあんなに大きいんだなぁ。音楽もとても美しい。樹木希林さんが最高。

ただやっぱりどう見ても「借りぐらし」ではなく「盗りぐらし」だし、アリエッティ達が人間のものを盗むことで生活できているという事実に全く感謝していないので終始モヤモヤ感があるのは否めない。泥棒の割にプライドだけは一丁前と思ってしまう。翔に「あなたのせいで出ていくことになった」っていうのとか責任転嫁が過ぎる。翔が引っ越してきた直後に思いっきり見られてるし、父親に釘を刺されたのに角砂糖自分から返しに行って家族構成までバラしてるし…。終盤で両親に自分のせいだって謝罪してるから、翔への言葉は単に八つ当たりだったんだろうけど。がっつり悪役として描かれてた使用人のハルさんも、言葉通り泥棒小人を捕まえたってだけの話で別に悪いことしてないよね。窒息しないようにちゃんと空気穴も開けてくれてるし…ぼっちゃんを閉じ込めるのはダメだけど。

あとアリエッティが髪留めとして使っている洗濯ばさみ?クリップ?の大きさに違和感があるのと、小人でありながらあれを片手で扱えるアリエッティの握力の強さはすごいと思う。『マーニー』でも思ったけど、舞台を日本にしたのに小人達は原作通りイギリス設定にしたせいで世界観が歪な所とかも。日本語を話すし読めるのに名前は横文字みたいな…そういう細かい部分を納得させてくれるだけの描写がないので、いまいち没入しきれないのがちょっと残念。

米林監督には他のジブリ監督にはない、何というか少し薄暗い感じの繊細さがあると思うので、今後も頑張って欲しい。
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