みてべいびー

ワイルド・アット・ハートのみてべいびーのネタバレレビュー・内容・結末

ワイルド・アット・ハート(1990年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

“This whole world is wild at heart and weird on top.”
リンチ作品の中では入門編というか、結構わかりやすい方なんじゃないかなぁと思う今作。EraserheadとかBlue Velvetはリンチワールドすぎて拒否反応起こす人多そうだし、Mulholland Driveは難解だし、Inland Empireとかになるともはや誰にも解せない域だから、Twin Peaks直後くらいで一番脂が乗ってる時期の作品な気がしてる。
一言でまとめると、もう本当に全部好きだった。今まで観たリンチ作品で一番好き。間違いなくラブロマンス、ラブバイオレンスに含まれるんだと思うけど、好きな恋愛映画は?って聞かれて答えられるような類の作品でもないからカテゴライズに困る笑。ラブバイオレンスだし逃亡劇だしファンタジーだしサスペンスだしコメディだし、全てのジャンルを網羅してるという点において、これは映画への賛歌だと捉えたい。そんな真面目に考えるべきテーマがあるのかも定かではないが、愛の狂気で動いてる遊園地みたいな映画。
クラブでLove Me歌う場面、落ち込んでるLulaのためにヘビメタかけて二人で謎のカンフーダンスするところ、バーで女遊び武勇伝披露するシーン、そしてLove Me Tender歌うラスト。正直結構バカバカしいし笑、二人がただただお互いに夢中なのを見せつけてるだけなのに、歴史に残るレベルの名シーンに仕上がってるからすごい。画も美しいしクレイジー。母が口紅塗りたくるシーンもどぎつい。これにパルムドール獲らせちゃう当時のカンヌの審査員むっちゃ変態!センス最高!!
Twin Peaksのキャスト陣がたくさん出てるのもいい。Laura Dern母娘が母娘役なとこから始まり、Twin PeaksのLaura Palmer母娘もおるし、金髪Isabella Rosselliniがいい味出してる。LuckyのHarry Dean Stantonもよき。あとSherilyn Fennの存在感。たったワンシーンしか出てこないのに、美しいし切ない。自分の死ぬ間際の言葉が「私のヘアピンはどこ?ママに殺されちゃう!」なのは嫌だなぁ。
でもやっぱBobby Peruの強烈さ笑!後半に差し掛かってやっと出てきたと思ったら、夢に見るほどの悪魔的ビジュアル。ストッキング被ったときの顔が脳裏にこびりついて一生拭えない。いい意味でトラウマ級。Willem Dafoe半端ねぇ。
逸話によると、Laura Dernは一気に数本煙草咥えなきゃいけない場面で、リンチに「思いっきり息吸って!」って言われてその通りにしてぶっ倒れたらしい。あと伝説のパイソンレザージャケットはNicolas Cageの私物で、この映画に合うと思ってリンチに直談判して、その案が採用されたらしい。それで撮影後、Laura Dernにプレゼントしたんだと。かわいいかよ。
元々小説がある作品だから、他のリンチ作品よりはリンチ色薄めな感じもするけど、でもやっぱこの人にしか作れなかったであろう世界観がしっかり確立されてるところがたまらん好き。Nicolas Cage好きだからって贔屓目なわけじゃない、はず、笑。こんな映画撮れちゃうリンチかっこいいなぁ、突き抜けてんなぁ。あぁこの先の人生で何回観ることになるんだろう、てか何回観れるだろう。本当なら毎日観たいくらい、マイオールタイムベスト入りかな。
みてべいびー

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