Bobsan

ドリラー・キラーのBobsanのレビュー・感想・評価

ドリラー・キラー(1979年製作の映画)
5.0
16ミリで撮影された不鮮明な映像が(意図した事かどうかは別にしても)主人公レノのみならず、NYの最底辺で生きるしかない人々の荒んだ心情をそのまま写し出しているようで効果的ですね。
アベル・フェラーラの監督長編2作目で、ジミー・レイン名義で主演も兼ねています。
ホラー映画というよりは、社会の最底辺でもがき苦しむ青年がぶっ壊れる姿を描いた社会派映画です。
パンクバンドが奏でる神経を逆撫でするような音楽(レノにとっては騒音)、家賃や電気代の請求、画商の無理解などが重なりレノの精神は崩壊寸前。そんな時にたまたまTVで見かけた携帯用バッテリーのCMが彼の心に火をつけました。夜な夜な街に出掛けては行き当たりばったりにホームレス相手に電動ドリルを叩き込みます。キルカウントは殺りも殺ったり総勢12人。
犠牲者の中に両掌にドリルを叩き込まれ、まるで十字架に磔にされたキリストような姿になる者がいたり、映画冒頭で教会から逃げ出すレノ、殺害シーンで流れる聖歌など、後々まで続くフェラーラ作品に底通するカソリックに対する欺瞞や畏怖というテーマはこの頃から健在ですね。
Bobsan

Bobsan