horahuki

ドリラー・キラーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ドリラー・キラー(1979年製作の映画)
3.4
電動ドリルで天(頭蓋骨)を突け!!
彼女が2人もいるけど金がねぇ!家賃滞納!送電停止!おまけに隣は爆音ロックバンドで夜も寝れねぇ!
そんなこんなで今宵もドリルで憂さ晴らし♫なスラッシャーホラー。

あらすじ…
売れない画家をやってる主人公。彼女2人と同居してるけど、金がなくて家賃も電気代も払えない。今描いてるバッファローの絵を売れば大金入る予定だけど、なかなか完成しない。おまけに隣でロックバンドが昼夜問わず演奏してるからストレスがマッハ。そんな時持ち運び式のバッテリーをCMで見つけ…。

少し前に見た『キラービー』よりさらに画質が悪い!さすがのレトロムービーコレクションですな。正直何やってんのかわかんないシーンだらけだけど、こんな画質でもディスク化してくれるだけで感謝です。

前半は全くハマれずただただ苦痛で挫折しそうになりましたが、中盤以降から徐々に引き込まれ最後まで見入ってしまいました。前半と後半で何か大きな変化があったわけではないんですけど、前にも後ろにも進めない息苦しい主人公の現状にこちらまで苦しくさせられて、目が離せなくなってしまいました。

本来なら破綻してるようなメチャクチャな構成なのですが、それが逆に主人公の閉塞感や息苦しさを表現してしまっているんですね。主人公が連続殺人鬼になっていく過程を描いた作品でありながら、その決定的なトリガーとなる描写はほぼ存在せず、その逆に物語的には不要とも取れる隣人ロックバンドの演奏シーンが本編の大部分を占めてる。曲はカッコいいのですが、主人公にとっては騒音でしかない。廃墟のようなボロボロな場末のマンションというハード面だけでなく、カメラワークやVHSの方がマシと思えるほどの酷い画質と相まって、主人公と同じように観客も不快感や閉塞感を覚えるように作られており、何をやっても上手くいかない主人公の心境に同調させられていくから目が離せない。

そしてそこら中が汚れていてボロボロで暗いマンハッタンという舞台。都会でありながら、その表からは見えない暗部で社会の車輪に潰されくすぶっている者の悲鳴を描いてるという点では『バスケットケース』で有名なヘネンロッターにも通じるものがある。

電動ドリルで人を殺すスラッシャー映画というアホみたいな設定ですが、追い続ける夢も上手くいかず、相談できる人も頼れる人も誰もいない。自宅で気を休めることもままならず、そのはけ口を自分よりさらに弱者へと向けてしまう主人公の悲痛な叫びが、観客の精神をも抉っていく。そして見終わる頃には疲労感がハンパないちょぴっと社会派なホラーになっている。これはDVD買ってよかった♫
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