ダイナ

バットマンのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

バットマン(1989年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

都市ゴッサムシティにてバットマンとジョーカーの闘いを映す1989年公開アメリカヒーロー映画。ダークかつどこかファンタジー感あるビル・工場が並ぶゴッサムシティの世界観がとてもイイ!

ジャック・ニコルソン演じる悪役ジョーカーの魅力が遺憾なく映されています。ジョーカーがいかにしてその容貌になり、社会に悪意を振りまくようになったかの経緯を追っていまして、ヒーロー映画ではありますが、敵側の魅力も伝えたい製作陣の心意気を感じました。ふざけたポーズを決めながら射殺したり、豊富な言葉遊びで挑発してきたり、握手で人を燃やしたり、「次の行動が読めない」所にワクワクさせられます。敵・モブ(民衆)・味方の命さえも簡単に消そうとする自己中心的横暴さもこれぞ悪役といった所。ジョーカーになる前のジャックについて、上の立場の割にフットワークが軽い印象を受けました。刑事との密会や文章破棄の潜入等下っ端に行かせるようなものと思うのですが、自ら赴きます。俺が俺がのグレーゾーンギリギリのカリスマ性がジョーカーという存在になることで、思い切りダークに振り切ってしまい存分に暴れ回る姿はいっそ清々しく見えます。肉弾戦は弱く、力でなく悪知恵で戦う所、本作散り際の情けなさ含めてとても好きな悪役でした。

特にジョーカーの魅力が詰まっていたと思うのは美術館襲撃の場面。絵画にペンキを塗りたくり、オブジェは叩き割る許し難いテロ行為ですが、流れる音楽や好き勝手やるジョーカー達の動きがなんともコミカル。気に入った絵は傷つけないといった、自分の感性には従う所も魅力の一つ。流れている音楽が「映画バットマンの音楽」でなく作中ステレオで音楽をかけていたっていうふざけた演出が面白いです。

本作バットマンが乗っている車がシャープなフォルムでカッコいいんですが、丸い爆弾をニュッと出す所は少し滑稽。毒ガス風船を纏めるためだけに用意されたかのような先頭のアーム部分もシュール。だけどもその後の風船を引き連れて空飛ぶシーンが幻想的で良いんですよねえ。月に重なってシンボルを映す所も印象的です。

警察の存在感の薄さには「この世界は警察いない?」と一瞬疑心。無能とかポンコツ以前に警察が全然来ない!ジョーカーが「200祭でバットマンと対決する、金撒く」ってテレビジャックして宣伝していたのに、警戒体勢とか張っていないレベルでテロの収拾がつけれられておらず、明確に出て来たのは一通り落ち着いてからのクライマックスの鐘の塔入り口場面。脳内補完するとしたら、ジョーカーの手下部隊による陽動作戦で別の場所に誘導されていたのでしょうか。序盤の市長の演説で警察の体たらくさを指摘し治安の悪さを嘆いていたことから、ゴッサムの警察は作中でもあまり信用されていなさそうです。だからこそこの世界ではバットマンの存在が頼もしく映るんですね。しかしジョーカー離脱は少し寂しい……。
ダイナ

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