不在

13回の新月のある年にの不在のレビュー・感想・評価

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)
5.0
7年おきにやって来る太陰年に、新月が13回巡る年が重なると、なす術もなく破滅する者が現れる…。

かつて女性と結婚し娘を授かったが、ある男の為に性転換手術を受けたエルヴィラ。
その最期の5日間を、我々は彼女と共に巡ることとなる。
そうして次第に彼女の全体像が見えてくる。
エルヴィラはジェンダーやセクシュアリティとは関係のない、全てを超越した所にある愛を求めていた。
愛を知らずに育ったせいで人の愛し方や愛され方が分からず、自分を殺し、相手の要求を呑むことが愛だと思い込んでいる。
ただ求められるままに身を委ね、遂には他人の為に性別まで変えてしまった。
そして1978年。
理由もなく人を死に追いやると言われるその年が巡ってくる。

しかしこの5日間を通して彼女の人生の全てを見た我々は知っている。
彼女はなす術もなく破滅した訳ではない。
ましてや暦や月が彼女を殺したのでもない。
エルヴィラは愛や許しの為に必死にもがき、足掻き続けた。
そして遂に自分の運命を自ら手繰り寄せたのだ。
その結果が死であったとしても、彼女の尊い選択であることに変わりはない。
自分自身に授ける究極の愛、それはまさに人生で関わった全ての人々の中心で横たわる彼女の姿にあるように思える。
不在

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