カタパルトスープレックス

13回の新月のある年にのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)
4.0
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督による「生きる意味としての愛」をテーマとしたドラマです。ゲイである自身の伴侶アルミン・マイヤーの自死をきっかけに作った作品だそう。

7年おきに来る「太陰年」に、新月が13回巡る年が重なると、なす術もなく破滅する者が幾人も現れる。エルヴィラは最後の5日間に愛を求めて色んな人に会いに行く。

ハンディカメラで追いながら出発地点と到着地点で構図がビシッと決まる。動く構図の巧みさは相変わらず。しかし、ニュー・ジャーマン・シネマっぽい前衛さが前作より色濃くなっています。そのためストーリー性が少し薄れているのが残念なところ。ただ、これは好みにもよると思います。

主人公は愛する仕事の同僚アントン・ザイツ(ゴットフリード・ジョン)の一言「お前が女だったら」で性転換手術を受けたエルヴィラ(フォルカー・シュペングラー)。トランスジェンダーということになってますが、エルヴィラは現在の定義でもトランスジェンダーなんだろうか?そう思わせる心の揺れがストーリーを進める力になっています。このジェンダーの揺れはタイトルにもなっている「13回の新月」なんでしょうね。愛を求めるゆえに、迷い、揺れる。そして、取り返しのつかない泥濘にハマっていく。

そのほか、イングリット・カーフェンなどファスビンダー映画の常連でキャストが固められています。もちろん、ファスビンダー監督本人も出演。キャラクター作りの意思疎通がとてもうまくいっている印象。