エイデン

イノセンスのエイデンのネタバレレビュー・内容・結末

イノセンス(2004年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

2032年
“人形使い”事件により対テロ特殊組織“公安9課”の草薙素子(少佐)が行方不明となってから3年
少佐の右腕だったバトーは、彼女のことを引きずりながら日々任務に当たっていた
そんなある日、無料モニターとして貸し出されていた“ロクス・ソルス社”の少女型ガイノイド“ハダリ”が暴走し、所有者を殺害するという事件が発生
現場にやって来たバトーは、警官2人まで殺害し未だ無力化されていないハダリの対処に当たるが、そのハダリは「助けて」という言葉を残し、彼の目の前で自壊してしまう
帰還したバトーは9課部長の荒巻から、既に同様の事件が8件起きており、いずれもハダリは自壊し、“電脳”も初期化されていたと説明され、捜査を行うよう命令を受ける
通常であれば9課が動く案件ではないはずだが、遺族による告訴が一切行われず全て示談で済まされており、政治家や元公安職員も被害者に含まれていることから、テロの可能性が捨てきれないための捜査だった
バトーはトグサと組み捜査に当たるが、失踪した少佐の件もあり、2人の間には緊張感が漂う
鑑識へと赴いた2人は、検死官のハラウェイから、今回ハダリは自らを故障させて人間を攻撃し、その結果 自壊を招いたらしいと説明を受ける
そんなハラウェイは、同じような案件は事実として起きており、人間がロボットを簡単に不要として捨てるからそうしたことが起こるという持論を持っていた
そんな言葉に惑わされながらも、ハダリの実態が性交用のセクサロイドだと聞き、それを公にしないため被害者遺族が告訴をしていないとわかる
また唯一ハダリに残されていた音声ファイルから「助けて」と繰り返す声が残されていたことも判明
そんな折、ロクス・ソルス社の出荷検査部長ヴォーカーソンがレンタルのボートハウスで惨殺死体となって発見されたとの連絡を受け、9課のイシカワと捜査を開始する
ヴォーカーソンは5日前から失踪しており、備え付けのキッチン用品で殺害されている様子
また部屋には拳銃や若い女性の写真データが隠されており、犯人がドアノブが変形するほどの力で侵入していたことから、違法改造されたサイボーグの犯行とも考えられた
そして後日、犯行現場近くに停められていた車両から、ヤクザ組織“紅塵会”が犯人として浮かび上がる
組長のイノウエがハダリの事件で殺害されており、その報復が理由と推察された
その事件を追うこととなった9課メンバーだったが、トグサだけが荒巻に呼び出される
荒巻は最近のバトーが失踪前の少佐に似て来ていることを案じており、彼を監視してほしいとトグサに依頼するのだった



士郎政宗の原作を映像化した『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の続編
日本のアニメ作品で初となるカンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映された

少佐が人形使いと融合し姿を消してから3年後
メインキャラをバトーにバトンタッチしつつ、新たな事件を描いていく

作品の下敷きとなっているのは原作のほか、ヴィリエ・ド・リラダンのSF小説『未来のイヴ』
この小説もギリシア神話に登場する彫刻家ピュグマリオンと、彼が作り上げ美の女神アフロディーテが命を吹き込んだ彫像ガラテアをモチーフにしており、
一貫して人が人形を作ることへの問いかけという体裁を持っている

それは本作の世界観において、“義体”化し機械に近づく人間と、成功に作られ人間に近づくロボットという、両側面から理想の人間へ至らんとするアプローチへの言及とも皮肉とも取れる
人間と人形には本作を代表する概念である“ゴースト”の有無という違いがあったものの、ゴーストがあるかのように振る舞うロボットの登場で、バトーは前作の人形使い同様にその境界に改めて直面していく
それはまた前作にていち早くその境界に触れていった少佐とバトーの関係性を暗示するものでもあるあたり上手い構成

アニメーションも制作協力にスタジオジブリまで迎え、CGも多く活用し力入れまくってエラいことになってる
特にコンビニのシーンは頭おかしい制作の仕方してるので注目してほしい

前作から引き続いての優れたSF描写や、刑事アクション風のストーリー、少佐の消失とその選択を引きずりながら生きるバトーを中心にハードボイルドに仕上げた作品
各々のキャラクターが語る哲学も前にも増して複雑化しているものの、エンタメ性もしっかり維持しているのでオススメ
観ましょう
エイデン

エイデン