エニグマ

イノセンスのエニグマのレビュー・感想・評価

イノセンス(2004年製作の映画)
3.9
前作よりも哲学的なセリフや引用が多くてより難解な作品になっている。少佐が消えたためバトーとトグサのバディ物であり、これはこれで面白い。生命倫理を主題とした話だと思うが、終盤バトーによる「犠牲者が出ることは考えなかったのか。人間のことじゃねぇ、魂を吹き込まれた人形がどうなるかは考えなかったのか?」というセリフが印象的だった。魂(ゴースト)を吹き込まれた人形を人間のエゴで殺すこともまた立派な加害であるということだと思う。また、女の子の「人形になりたくなかったんだもん」というセリフから人間が人形を卑下していることも分かる。ただ、攻殻機動隊の世界では多くの人間が義体を使ってサイボーグ化しており、人間と人形の境界も曖昧になっている。そう考えると人形との上下関係も怪しくなってくるのではないか。劇中のセクサロイドの様にロボットは人間に使役されるものという概念は、ロボットへの加害性を持っており危うい(ただセクサロイドの暴走は外的要因から生じているのでロボット自身に自己があったのかは不明である。少なくとも半ロボットのバトーからしてみればこの考えは危ういのではないかという推測。)。これは、AIの能力がますます向上し人間の能力に追従してきてる現代社会にも直結する話だと考える。
映像面で言えば、CGが多用されておりアニメーション表現としての幅が拡がっている一方で違和感があった。前作でもあったが民謡音楽(のようなもの)を流しながら街の風景を長回しするカットは押井守の好みなんだろうか。川井憲次作曲の傀儡謡という曲らしいが、世界観を更に拡張するような壮大な曲で良いと思う。
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